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経済・雇用
朝日新聞社

税に苦しむ人々 サラリーマンの知らない世界

初出:2015年8月24日〜12月28日
WEB新書発売:2016年4月21日
朝日新聞

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 所得税などの給与天引きが多いサラリーマンは、「税金」といってもピンとこない場合が少なくないが、自営業者や会社経営者たちには重大な問題だ。事業が振るわず市税などを滞納。市から売掛金について取引先に連絡され、事業に必要な「信用」が致命的に傷ついた男性もいる。消費税率などをめぐる議論が盛んだが、税金をめぐるリアルな現場からリポートする。

◇第1章 病院経営「8%」ショック
◇第2章 突然の「差押」、預金がゼロ
◇第3章 小さな延べ棒、大きな節税
◇第4章 「出国税」導入前に日本脱出
◇第5章 固定資産税、課税ミス40年
◇第6章 空き家放置で「実質増税」
◇第7章 閉店10年、今も固定資産税
◇第8章 【反響編】 延滞税8千万円、自宅公売
◇第9章 孫の塾費用、非課税贈与で
◇第10章 納骨堂、宗教かビジネスか
◇第11章 「非婚」ひとり親、置き去り
◇第12章 【反響編】 税過払い、返金応じぬ行政
◇第13章 公平な税のために 識者に聞く


第1章 病院経営「8%」ショック

 「今年度は10億円の赤字です! 節約しませんか? ペーパータオルはたくさん取らずに1枚だけ」
 千葉市の千葉大医学部付属病院(ベッド数835床)の職員用トイレにはこんな貼り紙がある。
 2014年度決算は7億円の赤字だった。04年度に国立大学法人になって初の赤字。消費税率8%への増税が病院経営を直撃した。

診療報酬では穴埋めできず
 公的保険の医療サービスは消費税が非課税だが、病院が仕入れる物品には消費税がかかる。今回の増税で千葉大病院は消費税の支払いが5億円増えた。診療報酬による穴埋めを差し引いても2億円の負担増だ。
 赤字対策としてあらゆる経費節減に取り組む。残業を減らすため、従来は午後6時や7時に始めていた医療スタッフの会議を5時開始に早めた。手術用の帽子や注射器などは千葉市立の2病院と共同購入し、単価の引き下げを図る。
 薬はもともと安い後発薬を優先してきたが、さらに徹底し、15年7月には後発の比率が80%に達した。2月には3本目の井戸を稼働させた。病院で使う水の8割が地下水となり、年間1千万円の経費を削った。
 山本修一院長は「大学病院は最先端の医療に携われるから人材が集まる。しかし、最先端の医療機器を導入すればするほど消費税の負担が増える。必要な投資なのに後ろから撃たれているような感じだ」と窮状を訴える。

ウィンドウズ、更新せず節約
 苦しいのは私立も同じ。川崎市の聖マリアンナ医科大学病院(1208床)では、診察室のパソコンの電源を入れると「XP」の文字が浮かび上がる。米マイクロソフト社の基本ソフト、ウィンドウズXPのことで、14年4月、顧客へのサポートを終了した。同病院は更新する予定だったが、延期して約20億円の経費を浮かせた。院内だけのシステムで、大手パソコンメーカーの協力を得ているので問題はないという。


 さらに業務委託していた看護助手は、直接雇用に切り替えた。委託費には消費税がかかるからだ。
 医師らの人件費に切り込む病院も出てきた。千葉県鴨川市に拠点を置く亀田総合病院グループ(992床)は、職員のボーナスを5〜6%引き下げた。14年度の消費税支払額が前年度より約4億円増。これは前年度の税引き前利益約1・5億円を上回り、赤字が現実味を帯びたからだ・・・

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