医療・健康
朝日新聞社

孫離れうつ 高齢者を襲う「生きがい」喪失の崖

2016年04月28日
(9700文字)
朝日新聞

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 70代の女性は、娘と2世帯住宅に住み、孫の世話をすることに生きがいを感じていた。だが、中学生になると、「うざい!」「お前なんか出ていけ!」などと言われるようになり、うつ状態になった――。共働きの子供夫婦に代わって育児を担い、充実した日々を過ごしていたものの、孫の自立にともなってうつをわずらう高齢者が増えている。高齢者特有の事情とは何か。乗り越えるためのこつは? 最新事情をまとめてみました。

◇第1章 家族・仕事失い、仮面うつ
◇第2章 愛犬と暮らせる特養
◇第3章 信仰と音楽、闘病の支え
◇第4章 思いくむ介護、利用者に力
◇第5章 恋する80代、再び歩けた
◇第6章 管理でなく、関係築くケア
◇第7章 米寿から介護スタッフに


第1章 家族・仕事失い、仮面うつ

孤独感募らせ、高齢者が発症
 2016年1月中旬の夜、川崎市中原区にある木造2階建てアパートの一室。独りで住む笹沼松子さん(78)は、精神科の長谷川洋医師(45)の訪問診療を受けていた。うつ病を患っていた。
 「家の前の踏切に行くと、いっそ飛び込もうかと思ってね……」。笹沼さんが、ぼそっと言った。
 「今の状況はつらいですよね。でも、そう言わないで、一緒にやっていきましょう」。長谷川医師は優しく語りかけた。
 数年前から、笹沼さんは「おなかが張る」「目が痛い」といった症状を訴え、内科クリニックや専門病院を受診した。何度も検査をしたが、「異常なし」。


支える側、一転
 12年3月、長谷川医師のクリニックを紹介され受診した。長谷川医師は「仮面うつ病」を疑った。うつの症状が、体の痛みに現れるタイプだ。お年寄りに多いという。抗うつ薬や抗不安薬を処方したが、あまり改善しなかった。
 笹沼さんは60歳すぎまで働いた。ラーメン屋や雀荘(じゃんそう)を経営し、ほとんど休みなく働いた。雀荘では客の徹夜マージャンにつき合い、朝ご飯を作ってあげたこともある。コツコツためたお金で、長男らに車をプレゼントした。めまぐるしい日々だったが、「周りの人たちを支えること」に、充実感を感じていた。
 夫に先立たれ、数年前には、頼りにしていた長男が膵臓(すいぞう)がんのため、亡くなった。「今でも、息子とパチンコに行く夢を見るんです」と笹沼さん。毎朝起きると、線香をあげ、長男の写真に「おはよう」と声をかける。
 最近は、親族ともほとんど連絡をとっていない。16年の正月も独りで過ごした。
 「体さえよけりゃ、また働くんだけどね」。今も、内科クリニックや病院に通い続けるが、症状は思うように改善しない。
 長谷川医師は、こう指摘する。「笹沼さんは猛烈に働きお金を稼ぎ、周りの人にふるまってきた。元々『支える側』だった人が、今はそういうことができないのは、つらいと思う。そこに息子さんの死が、追い打ちをかけた・・・

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孫離れうつ 高齢者を襲う「生きがい」喪失の崖
216円(税込)

70代の女性は、娘と2世帯住宅に住み、孫の世話をすることに生きがいを感じていた。だが、中学生になると、「うざい!」「お前なんか出ていけ!」などと言われるようになり、うつ状態になった――。共働きの子供夫婦に代わって育児を担い、充実した日々を過ごしていたものの、孫の自立にともなってうつをわずらう高齢者が増えている。高齢者特有の事情とは何か。乗り越えるためのこつは? 最新事情をまとめてみました。[掲載]朝日新聞(2016年2月27日〜3月4日、9700字)

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