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朝日新聞社

なして何も言わねかった 自死遺族、苦悩の日々

2016年04月28日
(7400文字)
朝日新聞

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 「いずれやるって思っていたから、ばかやろって」。義父に続き、夫が自死した女性(55)。不況で仕事が激減、眠れなくなり、がんも見つかった夫は、酒におぼれた。「2人も死なせた自分は悪い嫁なのか」。そんな思いが頭を駆け巡った。支えになったのは同じ自死遺族との会話だった。今はこう思う。「夫はただ一生懸命生きて、一生懸命悩んで、最後にそういう死に方を選んだだけ。誰にも被害を与えていない。だから、何も世間にやましく思うことはない」。自殺率が1995年から19年連続で全国ワーストだった秋田県。自死遺族の苦悩の日々を見つめた。

◇第1章 過労と重責、心身不調に
◇第2章 仕事激減の夫、がん・酒…
◇第3章 大切な人がまた逝った
◇第4章 息子の部屋、補償交渉半年
◇第5章 差別・偏見…尊厳守る動き


第1章 過労と重責、心身不調に

 「今度、どんな服を着せていくの」
 孫の入園式を翌月に控え、秋田市の渡辺多恵子さん(65)は布団の中で、長女(41)とメールをしていた。8年前の2008年3月。午後9時すぎのことだった。
 ふと小腹がすき、何か口に入れようと寝室を出ると、廊下に点々と血痕が続いていた。クレゾールの刺激臭が鼻をつく。
 長男祐樹さん(当時29)の部屋の戸が開いていた。
 「部屋に入るよ! どこか体でも悪いの」
 ベッドの上に、血のついた出刃包丁と数珠。床には酒の瓶や缶、睡眠薬の空箱が転がっていた。事態を察知し、頭が真っ白に。半狂乱のまま家の内外を捜すと、靴も車もある。急いで警察と長女に電話した。
 かばんの中から、勤めていた介護施設の理事長に宛てた封書が見つかった。1週間前に出した辞表で伝えた辞意を繰り返したうえ、最後が「このような行動をとった私をお許しください」と結ばれていた。
 祐樹さんは翌朝、自宅のそばの水路で見つかった。
 数年前から、同居していた夫や義父母が立て続けに亡くなっていた。そしてついに息子まで。「生きる意味」がわからなくなった。
    ◇
 自死の1年前。祐樹さんは28歳で介護施設の施設長に抜擢(ばってき)された。別に内定者がいたが突然辞退し、「若いから」と固辞したが、理事長に押し切られた。
 早番や泊まりを含む通常の介護業務をこなしながら、報告書作成など管理職としての膨大な事務が加わり、残業や休日出勤に追われた。年長の職員らと、あつれきも生じた。
 すると11月、腰痛が悪化して歩けなくなり、3週間ほど休職に追い込まれた。いま思えば、精神的な病から来たものだったのかもしれない。
 1月には、監査の結果、施設の不正が指摘される。資格がない職員に介護報酬を請求させていたとして、約1千万円の補助金の返還を請求された。「母さん、俺何も悪くないからね」。帰宅後、そう吐き捨てた・・・

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なして何も言わねかった 自死遺族、苦悩の日々
216円(税込)

「いずれやるって思っていたから、ばかやろって」。義父に続き、夫が自死した女性(55)。不況で仕事が激減、眠れなくなり、がんも見つかった夫は、酒におぼれた。「2人も死なせた自分は悪い嫁なのか」。そんな思いが頭を駆け巡った。支えになったのは同じ自死遺族との会話だった。今はこう思う。「夫はただ一生懸命生きて、一生懸命悩んで、最後にそういう死に方を選んだだけ。誰にも被害を与えていない。だから、何も世間にやましく思うことはない」。自殺率が1995年から19年連続で全国ワーストだった秋田県。自死遺族の苦悩の日々を見つめた。[掲載]朝日新聞(2016年4月12日〜4月16日、7400字)

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