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経済・雇用
朝日新聞社

フィンテックで世界はどう変わるか?

初出:2016年4月20日〜4月23日
WEB新書発売:2016年5月12日
朝日新聞

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 金融(ファイナンス)と技術(テクノロジー)を組み合わせたビジネス分野「フィンテック」が、これまで金融サービスを独占してきた既存の銀行やカード会社、保険会社などの隙間を突き、新しいサービスを次々と生み出している。個人の資産管理や資産運用、融資などにもその範囲は広がる。大手と組んで存在感を高めるベンチャーも出てきた。フィンテックは私たちに何をもたらすのか。最前線の動きを紹介する。

◇第1章 金融+技術、安く便利に
◇第2章 ビッグデータを解析、即融資
◇第3章 「分散型台帳」情報管理に革新
◇第4章 大手銀、起業家募り対抗


第1章 金融+技術、安く便利に

 京都・清水寺近くの木造一軒家で営業する茶道の体験教室「カメリア」は、外国人観光客でにぎわう。
 お点前を見学し、抹茶をたてる。お代は2千円。「クレジットカードでも支払えますよ」。代表の森温子(41)が英語で客に語りかけ、タブレット端末をとり出した。イヤホンジャックにさした約3センチ四方の読み取り機にカードを通せば支払いは終わりだ。米テキサス州から来た女性(61)は「手元に日本円がいくらあったか心配になるから、カードが使えるのは安心」と話した。


 森は2014年春にカメリアを始めて2カ月で、米ベンチャー企業スクエアの支払いシステムを入れた。カードが使えるようになって体験客は増えたという。
 大手カード会社のシステムを使うには審査があり、経営実績が必要だ。事業規模が小さいほど手数料もかさむ。スクエアなら、アプリをダウンロードして読み取り機を買うだけですぐ始められ、手数料も一律3・25%と大手より安い。
 スクエアは事前審査に時間をかけない代わりに、システムの利用状況を把握。不正な請求があれば、取引をやめる。13年に日本に進出し、利用する事業者は全都道府県に広がる。日本代表の水野博商は「既存の金融機関が手がけきれなかった中小の商店を手助けしたい」と語る。
 スクエアが提供するような新サービスは「フィンテック」と呼ばれる。金融(ファイナンス)と技術(テクノロジー)を組み合わせた造語だ。これまで金融サービスを独占してきた既存の銀行やカード会社、保険会社などの隙間を突き、新しいサービスを生み出している。個人の資産管理や資産運用、融資などにもその範囲は広がる。大手と組んで存在感を高めるベンチャーも出てきた。
 個人のお金のやり繰りを助ける「家計簿アプリ」を提供するマネーツリー(東京)は、メガバンクのみずほ銀行と提携。ネット上では過去3カ月間分しか見られなかったみずほ銀の口座の入出金記録を、登録以降の分はずっと見られるサービスを始める。
 マネーツリーが提供する家計簿アプリは、複数の銀行口座や電子マネーの残高、クレジットカードの利用状況など、自分の金融資産がいくらあるのか、スマートフォン上で瞬時に把握できる。カードの明細記録をもとに、支出項目ごとに自動的に仕分けられる。
 膨大なデータを管理し、仕分けするノウハウがみずほ銀の目にとまった・・・

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