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朝日新聞社

三段壁から自死SOS 「死にきれない」教会で共同生活

初出:朝日新聞2016年3月30日〜4月3日
WEB新書発売:2016年5月12日
朝日新聞

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 和歌山県白浜町の景勝地「三段壁」。周辺で身を投げるなどしたと思われる遺体の数は2008年の21人をピークに、15年は8人まで減った。しかし、崖の安全柵向こうにある看板に書いてある、地元の教会につながる電話番号には、月80回の電話がある。「死にきれない。飛び込めない」。牧師が保護し、教会で共同生活をする人は約20人。自立への一歩として、弁当屋を始めた。仕事復帰プログラムを提供する病院、自助グループを作って学生をケアする大学――。自死を食い止め、心の病や悩みを持つ人を支える和歌山の人々を追った。

◇第1章 【現場で】自死止めたその先に
◇第2章 【病院で】病手なずける術学ぶ
◇第3章 【大学で】悩む学生に向き合う
◇第4章 【NPOで】「命の門番」養成に力
◇第5章 【行政で】命絶つ高齢者目立つ


第1章 【現場で】自死止めたその先に

◎牧師の藤藪さん、自立支援で葛藤
 「重大な決断をするまえに一度是非ご相談下さい」。和歌山県西牟婁郡白浜町の景勝地、三段壁(さんだんべき)。高さ約50メートルの海沿いの崖の上の道を歩くと、安全柵の向こうに看板がある。書かれた電話番号(0739・43・8981)は、白浜バプテストキリスト教会につながる。教会の牧師の藤藪(ふじやぶ)庸一さん(43)のもとには毎月80回の電話がある。「待っていて下さい。迎えに行きます」
 白浜署によると、三段壁周辺で身を投げるなどしたと思われる遺体の数は2008年の21人をピークに、安全柵の設置で09年に10人と減少。近年は13年が12人、14年が11人、15年が8人と推移している。
 藤藪さんが保護し、教会に身を寄せて共同生活している人は現在、20〜70代後半の約20人。心の病や、経済的困窮を抱える人らが人生の再出発を準備している。藤藪さんは「それぞれ色々な事情を抱えているが、問題が問題を呼ぶ悪循環にはまっている点で全員が共通している」と話す。
    ◇
 「神様、感謝します」。祈りとともに始まる午後6時半からの夕食のひとときは全員で過ごす。「花壇をきれいにする活動をやってみない? ハーブとか植えてさ」と女性に話しかけていた。自立の一歩を促すため、試行錯誤を重ねる。


 「助けてもらった命を大切にしたい」と話す男性(73)は16年1月、大阪府から来た。身元が分かるものを捨て、お金も酒などで使い果たしていた。夕方に三段壁に到着し、2時間ばかり、決心しては近づき、また引き返した。「死にきれない。飛び込めない」。そんな時、看板が目に入った・・・

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三段壁から自死SOS 「死にきれない」教会で共同生活
216円(税込)

和歌山県白浜町の景勝地「三段壁」。周辺で身を投げるなどしたと思われる遺体の数は2008年の21人をピークに、15年は8人まで減った。しかし、崖の安全柵向こうにある看板に書いてある、地元の教会につながる電話番号には、月80回の電話がある。「死にきれない。飛び込めない」。牧師が保護し、教会で共同生活をする人は約20人。自立への一歩として、弁当屋を始めた。仕事復帰プログラムを提供する病院、自助グループを作って学生をケアする大学――。自死を食い止め、心の病や悩みを持つ人を支える和歌山の人々を追った。[掲載]朝日新聞(2016年3月30日〜4月3日、6800字)

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