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社会・メディア
朝日新聞社

ニュースキャスターは今何を考えているのか 政権対テレビの構図

初出:2016年4月20〜4月29日
WEB新書発売:2016年5月19日
朝日新聞

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 政治権力の側からテレビへの「注文」が相次いでいる。研究者やジャーナリストたちから、政府・与党の動きに対し懸念の声も上がっている。では、当のニュースの現場では、どう受け止められているのか。局の顔ともいうべき、NHKとすべての在京キー局の報道番組のキャスターたちに聞いた。【登場するキャスター】河野憲治、村尾信尚、富川悠太、星浩、大江麻理子、市川紗椰、寺島実郎(敬称略)

◇第1章 表現の自由、「過敏」であるべき/河野憲治さん
◇第2章 若い人たちを意識し伝えたい/村尾信尚さん
◇第3章 現場主義を貫きたい/富川悠太さん
◇第4章 手ごわい権力、監視することを意識/星浩さん
◇第5章 現場を見る、親近感を武器に/大江麻理子さん
◇第6章 政治的公平性、ものすごく相対的/市川紗椰さん
◇第7章 深い議論で問題意識引き出す/寺島実郎さん


第1章 表現の自由、「過敏」であるべき/河野憲治さん

 政治権力の側からテレビへの「注文」が相次いでいる。
 安倍晋三首相は2014年の衆院選前に出演したTBSの番組で、アベノミクスの効果についての街頭インタビューを聞き、賛成の声が全然反映されていないとして、「おかしいじゃないか」とクレームを付けた。自民党は選挙報道の公平中立を求める文書を各テレビ局に送った。15年4月には、自民党の調査会が、番組内容をめぐりNHKとテレビ朝日の幹部を事情聴取した。6月には自民党の勉強会で「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番」との発言も出た。
 放送を所管する高市早苗総務相は16年2月の国会答弁で、「政治的公平」などを定めた放送法4条に違反した場合、放送局に電波停止を命じる可能性があるという考えを示した。
 一方、テレビでは、16年春、時に鋭く権力に切り込んだ国谷裕子、岸井成格(しげただ)、古舘伊知郎の3氏が番組を去った。降板に至る事情は説明された。だが、何らかの圧力や局側の忖度(そんたく)があったのではないかとの疑念も残る。研究者やジャーナリストたちから、政府・与党の動きに対し懸念の声も上がっている。
 では、当のニュースの現場では、どう受け止められているのか。テレビの表現の自由は揺らいでいないか。日々のニュースは、萎縮することなく伝えられているのか。局の顔ともいうべき、NHKとすべての在京キー局の報道番組のキャスターたちに聞いた。(放送取材班)

 キャスターは自分の意見を言っていると思われがちですが、僕の場合は基本的にそうではありません。僕は何でも知っている人ではなく、あるテーマについて何でも知っている人たちに一番近い人。NHKの記者が集めた情報から、補足すべきものを、自分の言葉に置き換えて伝えています。
 昨今、国会では「政治的公平性」が話題になっていますが、僕たちの現場で外から圧力を感じたり、萎縮して忖度したりすることはありません。
 忖度という言葉が独り歩きしている部分もあると感じます。公共放送の記者であることを駆け出し時代から自覚して、「これ以上やると偏る」と自分の中で調整して仕事をしている。その仕事ぶりを「忖度」と言われるのかもしれませんが、政権や大臣が代わったからといって、取材する我々の判断は変わりません。ジャーナリストは、表現の自由に関わる問題には「過敏」であるべきです・・・

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