政治・国際
朝日新聞社

ベールに包まれた北朝鮮 ベールに包まれた組織KCIAが見た

2016年05月26日
(24100文字)
朝日新聞

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 36年ぶりに朝鮮労働党大会を開いた北朝鮮。ミサイル発射実験などで国際的な信用は失墜しているが、軍事的な脅威は大きい。北朝鮮を知る手がかりの一つは、朝鮮半島での南北の情報戦。韓国の中央情報部(KCIA)で「北朝鮮を最も知る男」と言われた康仁徳氏(元統一相)の話などから北朝鮮の本質を探る。

◇第1章 韓国、2カ月前にソウル攻撃予測
◇第2章 思想拡散へ韓国に地下組織
◇第3章 韓国、緊張緩和求め体制競争
◇第4章 秘密接触でつかんだ「本音」
◇第5章 「党中央」から指示、何者なのか
◇第6章 権力闘争、主席の弟を粛清
◇第7章 世襲の重圧が生む、虚勢と粛清
◇第8章 古い戦車200台、衛星が写した
◇第9章 飛行機や戦車、「実物」から情報
◇第10章 国力の誇張・偽りを見抜く
◇第11章 情報戦、新聞記者も使った
◇第12章 無線でつかんだ高度な情報
◇第13章 軍事技術、中東・アジアへ拡散
◇第14章 極まる「個人崇拝」、映像が示す
◇第15章 心理戦、互いに続けた地下放送
◇第16章 「忠誠心示す」続くビラまき
◇第17章 韓国人拉致3835人、516人戻らず
◇第18章 観光・農業通じ韓国から情報流す
◇第19章 「南侵トンネル」次々見つかる
◇第20章 核開発の脅威、米国は動かず
◇第21章 「ポプラ事件」悔やまれる甘い処理
◇第22章 関東軍のソ連分析に驚嘆
◇第23章 党大会、個人独裁を正当化


第1章 韓国、2カ月前にソウル攻撃予測

 北朝鮮は、36年ぶりに開く5月の朝鮮労働党大会を前に、国際社会への挑発を続けて緊張を高めている。北朝鮮とは何者なのか。その手がかりは、朝鮮半島での南北の情報戦にある。韓国中央情報部(KCIA)で「北朝鮮を最も知る男」と呼ばれた康仁徳(カンインドク)氏の証言から、北朝鮮の変わらぬ本質に迫る。

◎68年、大統領府裏山で銃撃戦
 1968年1月18日午前2時ごろ、ソウル。KCIAで北朝鮮を分析する課長だった康仁徳が住む官舎で、電話が鳴った。受話器の向こうで担当官が叫んだ。「課長、たくさん入ってきました。武装共匪です」。共匪とは、共産主義の匪賊(ひぞく)の意味だ。北朝鮮による青瓦台(韓国大統領府)襲撃未遂事件の始まりだ。
 南北軍事境界線を突破したゲリラは計31人。機関銃などで重武装していた。17日、雪山に薪を取りに出てゲリラと遭遇した韓国人男性の通報で露見した。康は事件の2カ月前、当時の朴正熙(パクチョンヒ)大統領の前で「1月初め、北の特殊部隊がソウルを攻撃するだろう」と予測していた。事件発生を報告する電話を受けたとき、「ついに来たか」と思い、受話器を握りしめて極度に興奮していたと振り返る。
 ゲリラ侵入を予測したのは、情報収集と分析の結果だ。国防省は警備や国民の申告態勢を強化。情報の重要さが理解され、KCIAの認知度は上がった。
 だが、ゲリラには「ソウル攻撃」の予想を超えた任務があった。最大の目標は、朴大統領の暗殺だった。韓国側が急きょ敷いた捜索網をかいくぐり、驚異的な速さで雪の中を山脈伝いに移動した。
 68年1月21日、日曜の夜。再び現れたゲリラは、青瓦台まであと数キロの裏山まで迫っていた。激しい銃撃戦の末、29人が射殺され、1人が逃走。1人が拘束された。

◎3年前から侵入事件頻発
 康がゲリラ侵入を予測した背景には伏線があった。「予兆は1965年ごろからあった」。2〜8人で構成する北朝鮮ゲリラが、軍事境界線や海岸線などから頻繁に侵入。東部の江原道(カンウォンド)では、韓国女性を刃物で切りつける事件も発生した。
 67年1月、奇妙な事件が起きた。何者かが南北軍事境界線から韓国に侵入した。捜索の結果、3人の若い男がソウル駅や中心部・鍾路(チョンノ)地区の映画館などで捕まった・・・

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ベールに包まれた北朝鮮 ベールに包まれた組織KCIAが見た
216円(税込)

36年ぶりに朝鮮労働党大会を開いた北朝鮮。ミサイル発射実験などで国際的な信用は失墜しているが、軍事的な脅威は大きい。北朝鮮を知る手がかりの一つは、朝鮮半島での南北の情報戦。韓国の中央情報部(KCIA)で「北朝鮮を最も知る男」と言われた康仁徳氏(元統一相)の話などから北朝鮮の本質を探る。[掲載]朝日新聞(2016年4月12日〜5月4日、24100字)

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