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教育・子育て
朝日新聞社

鉄道学校の子供たち 鉄道女子もいる 岩倉高校・昭和鉄道高校の青春

初出:2016年5月5日〜5月15日
WEB新書発売:2016年6月16日
朝日新聞

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 日本初の鉄道が新橋―横浜間で開業したのは1872年。岩倉高校の前身、鉄道学校が開校したのは、四半世紀後の1897年だ。現在は運輸科で約400人、普通科で約800人が学ぶ総合高校となっている。 昭和鉄道高校もまた、鉄道従業員の養成を目的に創設された。前身の昭和鉄道学校は1928年に開校。現在は1年次に鉄道の基礎を学び、2年次からは鉄道や旅客業、文系大学を目指す「運輸サービス」、技術職や理系大学を目指す「運輸システム」の2コースに分かれる。「夢は鉄道員」。鉄道業界に数多くの人材を送り出してきた岩倉高校と昭和鉄道高校で学ぶ生徒たちを紹介します。

◇第1章 安全忘れず、出発進行
◇第2章 運転士の夢へ、新幹線通学
◇第3章 女子1期生3人、将来に向け奮闘
◇第4章 入学10日後、はや就職ガイダンス
◇第5章 好きが高じて、部活でSL制作
◇第6章 ラクロスの連携、仕事に生きる
◇第7章 未来をみつめて、新たな道へ


第1章 安全忘れず、出発進行

 「本物の運転士みたい!」。JRの車両を模したシミュレーターで男子小学生が操作レバーを動かすと、運転席前のCG画像の景色も流れるように動き出した。その歓声に、見守る高校生たちも笑顔になった。
 JR上野駅前の私立岩倉高校(浅井千英校長)。ゴールデンウィーク初日の2016年4月29日、小中学生約80人を招いた体験学習「電車運転会」での一コマだ。模型電車の運転体験コーナーや、高校生自作のミニSLに乗車できるコーナーもあった。
 同校は、鉄道員の養成を目的に約120年前に創設された。現在も鉄道員を目指し、全国から生徒が集まる。全校生徒の3分の1、約400人が運輸科に在籍。カリキュラムの約7割は英語や数学などの普通科目、残りはシミュレーターを使った実習など、鉄道や観光に関する科目だ。運輸科の生徒の約半数は鉄道会社などに就職する。
 「電車運転会」は学校主催の行事だが、鉄道研究部、鉄道模型部、工作研究部の生徒約30人も運営に参加した。運輸科3年で鉄道模型部の副部長、田中学さん(17)は「お子さんの喜ぶ顔を見るとやりがいを感じます。昔は恥ずかしくてどう声をかけたらいいか分からなかったけど、今は自然に話しかけられるようになりました」。



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 鉄道を学ぶ意義は、実務の習得にとどまらない。そう話すのは進路指導部主任の大日方樹(おびなたいつき)教諭(41)だ。同校OBで、私鉄の運転士を務めた。「安全や人命を預かる使命感、公共心や気配り、コミュニケーション力など、鉄道を切り口に、社会性豊かな生徒を育てたい」
 その思いは生徒にも伝わる。
 「人身事故は単に電車の遅延じゃない。もし自分がその電車を運転していたらと考えるようになった」と3年生の松崎佑紀さん(17)は語る。運転業務の授業を担当する元鉄道会社勤務の岡野誠治教諭(59)のこんな言葉が心に残った。「人間はミスをする。でも、鉄道ではミスは絶対に許されない・・・

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