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朝日新聞社

たそがれの都市、孤独な高齢者 街と共に老いて死ぬ

初出:2016年5月18日〜5月21日
WEB新書発売:2016年6月30日
朝日新聞

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 少子高齢化や核家族化が進み、一人暮らしのお年寄りが増えている。都市部などではいわゆる「孤独死」も目立つ。地域にもよるが、地縁・血縁関係が事実上崩壊し、お年寄りを支える仕組みが昔と変わったにもかかわらず、公的保障が追いついていかないのが現状のようだ。「孤独死」の現場を追うと共に、ベストセラー「下流老人」(朝日新書)の著者・藤田孝典さんにも話を聞いた。

◇第1章 孤独死、ひとごとじゃない
◇第2章 夫が病死、妻も「追うように」
◇第3章 「見守り」近くから遠くから
◇第4章 「下流老人」著者・藤田孝典さんに聞く


第1章 孤独死、ひとごとじゃない

◎1ヵ月後発見 遺品整理は業者に
 2016年2月上旬、JR横浜駅からほど近い団地に、作業服に身を包んだ男性らがトラックを降りて入っていった。
 一見、引っ越し業者に見える彼らは、不動産会社や遺族から依頼を受け、自宅でひっそり亡くなった高齢者らの遺品整理を行う「あんしんネット」(東京)の作業員らだ。その整理作業に同行した。
 団地の一室で「孤独死」したのは86歳の男性。1989年ごろ、できたばかりの団地に妻と入居。海外旅行が趣味の夫婦だったが、18年前に妻を亡くしてからは一人暮らしだった。16年1月31日、風呂場につかったまま亡くなっているのを民生委員らが見つけた。脳挫傷があり、死後約1カ月が経っていたという。
 2LDKは、本などが所狭しと散らばっていた。風呂場に入ると、浴槽に残ったままの水は茶色く変色し、強い異臭が漂った。台所には中身が黒こげになった鍋が残されていた。
 部屋のカレンダーは15年12月のまま。28日には「マルエツ 正月用品」と書かれ、新年を迎えることができなかった家主を寂しく待っているようだった。雑然とした部屋を、マスク姿の作業員が手際よくポリ袋にまとめていった。この日の作業は約6時間かかった。


 作業を依頼したのは、亡き妻の弟(83)と妹(78)。男性には子どもや兄弟はいなかったという。義弟は「孤独死がまさか身近に起きるとは思っていなかった」と驚きつつ、「残された人がこんなに大変だとは……」とつぶやいた。
 妻の死後、男性は年金や貯金を切り崩し、苦しい生活だったようで、いつしか親族ともあまり連絡を取らなくなっていたという。「『助けてくれ』と言ってくれればよかったのに・・・

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