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朝日新聞社

ふるさと納税狂奔曲 高額所得者ほど得をする仕組みの是非

初出:2016年6月15日〜6月22日
WEB新書発売:2016年7月7日
朝日新聞

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 2015年度の寄付額の首位は、高級和牛や焼酎が売りの宮崎県都城市で42億3100万円。2位は、魚やタブレット型端末「iPad」が話題を呼んだ静岡県焼津市。5位の岡山県備前市や8位の長野県伊那市も家電が人気を集めた――好みの地方自治体を選んで寄付をすると、寄付額のほぼ全額が減税される「ふるさと納税」が急増しています。熊本地震の被災地を支援するために活用される一方で、様々な問題点も指摘されています。仕組みや課題を読み解きます。

◇第1章 2千円で豪華な返礼品
◇第2章 高所得者ほど恩恵受ける?
◇第3章 被災地支援にもなる?
◇第4章 寄付金はどう使われているの?
◇第5章 企業版、2016年度からスタート 仕組みは?


第1章 2千円で豪華な返礼品

 好みの地方自治体を選んで寄付をすると、寄付額のほぼ全額が減税される「ふるさと納税」が急増しています。熊本地震の被災地を支援するために活用される一方で、様々な問題点も指摘されています。仕組みや課題を読み解きます。

 ふるさと納税は2008年度に始まった。寄付額の2千円を超える分が所得税と住民税から減税され、15年度からは減税対象となる寄付額が約2倍に引き上げられた。手続きも簡単になって、寄付額は急増した。
 総務省は16年6月14日、15年度に全国の自治体が受け取った寄付額は、前年度の4倍を超える1653億円になったと発表した。同省は当初、1300億〜1400億円程度を見込んでいたが、15年末にかけての「駆け込み寄付」の伸びが想定を上回ったという。
 多くの自治体は寄付を集めるために返礼品を贈っており、品物をカタログ感覚で選べる民間業者のサイトやガイド本も普及。事実上「2千円で豪華な返礼品がもらえる制度」として人気を集めている。寄付額に応じて返礼品は豪華になり、高所得者ほど2千円で多くの「もうけ」を得られる。
 例えば共働きで給与年収700万円の場合、約10万8千円の枠内なら自己負担2千円で寄付できる。この枠は給与年収1億円なら約430万円まで増え、数百万円分の価値のある返礼品を受け取ることも可能だ。
 15年度の寄付額の上位には、高級食材や家電で注目を集めた自治体が並んだ。首位は、高級和牛や焼酎が売りの宮崎県都城市で42億3100万円。2位は、魚やタブレット型端末「iPad」が話題を呼んだ静岡県焼津市。5位の岡山県備前市や8位の長野県伊那市も家電が人気を集めた。


 全1788自治体のうちトップ1%を占めるにすぎないこれら上位20自治体が、全体の27%の寄付額を集めた。こうした自治体が潤う一方、減税分を肩代わりする国や都市部の自治体などでは、福祉や子育てといった行政サービスに充てる財源が目減りしている。
 目減りしたこの財源の相当部分が、寄付先の自治体で実質的に返礼品の購入に充てられている。15年度の寄付額1653億円のうちほぼ半分の793億円が、返礼品の購入や郵送などに費やされた。備前市は27億1600万円の寄付を得たが、家電や自転車の購入費として市内の業者7社に約12億円を支払った・・・

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