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医療・健康
朝日新聞社

クマやヘビより怖いハチ 毎年20人前後がなくなる脅威の正体

初出:2016年6月27日〜7月1日
WEB新書発売:2016年7月14日
朝日新聞

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 関東地方に住む女性(50)は、夫の養蜂業を手伝っていて、ミツバチに顔を刺されました。体に異変を感じて病院に行くと、待合室で意識を失いました。ハチ毒による重いアレルギー症状「アナフィラキシーショック」と診断され、自己注射薬「エピペン」を持つよう指示されました。「家業のハチにアレルギーを持つなんて……」。危険な生物というとクマや毒ヘビなどを思い浮かべますが、実はそれらよりはるかに怖いのがハチ。毎年20人前後が刺されてなくなっています。身近な脅威、ハチについて徹底取材してみました。

◇第1章 ミツ採取、休憩中「痛っ」
◇第2章 また刺されると命の危険
◇第3章 免疫療法で体質改善険
◇第4章 刺されても腫れただけ
◇第5章 命落とす危険、認識を


第1章 ミツ採取、休憩中「痛っ」

 2014年5月下旬、関東地方に住む女性(50)は、夫(53)が営む養蜂場を回っていた。これまで現場に出ることはなかったが、人手不足のため、収穫期を迎えた約1カ月前から巣箱のミツの採取を手伝っていた。
 「足手まといにならないかと、緊張する毎日だった」
 飼育しているのはセイヨウミツバチ。春から巣箱の半径2〜3キロを飛び回り、アカシアやエゴ、クリなどのミツや花粉を巣箱に集める。竹やぶや林など約20カ所に置いた計約260箱の巣箱から6月末まで採取を続ける。
 性格のおとなしいミツバチでも、巣箱に近づくと攻撃的になる。作業中は、顔を守る網付きの麦わら帽子をかぶり、長靴に厚手のゴム手袋を身につけていた。それでも時々、針がゴムを突き抜けて、手足を刺された。
 この日は、夫婦のほかに、臨時で雇った作業員5人も加わっていた。女性は巣箱から巣枠を取り出し、びっしり付いたミツバチをブラシで払い落とす作業にあたっていた。ハチが残っていると、遠心分離機にかけるベテランの作業員から「掃き足りないぞ」と怒られた。ていねいに払っていると、「遅い」と言われた。
 全員で巣箱から7メートルほど離れた草地で休憩していると、3〜4匹のミツバチが向かってきた。威嚇を示す激しい羽音を立て、周辺を回り始めた。
 みな麦わら帽子を外していたが、女性以外は気にしていなかった。1匹が女性に近づいてきた。刺激を与えないよう、静かにその場を離れた。
 「痛っ!」
 いままでにない激痛が走った。マスクの上から唇の左上を刺されていた。ほおが腫れてくるのがわかった。痛みをこらえながら作業をこなした。
 夕方、帰宅しても痛みはひかず、頭がぼうっとしてきた。鏡を見ると、首の部分に赤いじんましんが出ていた。夫に「体調がおかしい」と伝え、約4キロ離れた病院へ車で向かった。
 病院の待合室で長いすに座っていると、汗があふれてきた。「おかしい」と思った矢先、気を失った・・・

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