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経済・雇用
朝日新聞社

創業家の乱 会社はだれのものか?という永遠のテーマ

初出:2016年7月8日〜7月9日、8月24日〜8月26日
WEB新書発売:2016年9月8日
朝日新聞

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 会社は一体だれのものだろう。資本主義の原則からすれば、それは当然「株主」など出資者のものだ。しかし、現代社会では従業員や社会全体のものという一面もある。そのような夢と幻想を振りまいてきたからこそ、資本主義は個人のやる気と創造性を引き出し、世界中に広がって、21世紀まで生き残ってきたのだろう。「会社を成長させる過程は面白いが、大きくなった会社を守るのはつらい」(家電量販店の創業一族)。会社を作って育て、やがて手放すこともある創業家。経営陣との微妙な関係などを日米のいくつかの企業に見た。

◇第1章 成長の末「お家騒動」
◇第2章 経営に第三者、対立浮き彫りに
◇第3章 求心力のシンボル、豹変も
◇第4章 [出光創業家の乱]―「モノ言う」立場を堅持/合併めざす経営陣と溝
◇第5章 [出光創業家の乱]―業界再編の流れは続く/「条件闘争」否定、見えぬ妥協点


第1章 成長の末「お家騒動」

 今月8日、定食店経営の大戸屋ホールディングスが異例の第三者委員会を設置した。よくあるような不祥事の原因究明ではない。委員長の弁護士、郷原信郎は記者会見で「経営陣と創業家との確執の原因と経緯を調べる」と語った。
 始まりは半年前の2月、都内の大戸屋本社であった取締役会だ。
 冒頭、創業家出身の取締役、三森智仁(27)が「ひとこと言いたい」と切り出した。関係者によると、前会長で父親の久実が手がけた海外事業を、現経営陣が縮小していることに不満を表明し、「辞任する」と述べた。約5分、社長の窪田健一(46)ほか取締役は黙って聞いていた。
 経営理念に「フードサービス業を通じ、人類の発展に貢献する」と掲げる大戸屋は、智仁の祖父が1958年に東京・池袋に開いた食堂が起源だ。
 それを「大戸屋ごはん処」として一大チェーンに育てたのが79年に家業を継いだ久実だ。だが昨年、肺がんで57歳で急逝する。窪田は、久実から2012年に社長を託されていた。
 窪田はまず、久実の肝いりだった不採算の野菜栽培や海外事業の撤退に手をつけた。今年に入り、智仁に香港の子会社社長への就任を言い渡す。
 5月、智仁は母親と連名で文書を公表した。6月の株主総会で、会社が出す取締役11人中8人を入れ替える人事案に、大株主として反対するとした。
 総会で、窪田は創業家との不和を陳謝。智仁の人事は「語学や現場経験を積んでほしかった」と述べた。智仁も出ていたが、人事案には反対せず、沈黙を貫いた。確執は、いったん落ち着いたかにみえた。
 第三者委の設置で、改めてメスが入る。郷原は「経営陣への感情的な対立が創業家に少なからずある」とみる。久実のワンマン路線を修正した経営陣が、わだかまりを持つ創業家と和解したい意図も読み取れるが、智仁側の協力はまだ得られていないという・・・

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