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朝日新聞社

楽しく登るのが一番 東海地方の山ガイド

初出:朝日新聞2016年4月1日〜6月3日
WEB新書発売:2016年9月29日
朝日新聞

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 登山歴4年の62歳記者が、東海地方と、隣接する長野県や滋賀県などの山を登ってリポート。登山ルートや高低図のほか、「しんどさ」も星マークで表示。「体力勝負やタイムトライアルもたまにはいいが、楽しく登るのが一番だ」。20合目まである手ごわい恵那山、新幹線から見上げると圧倒される伊吹山、アルペンムードが漂う鎌ケ岳、竜神伝説の夜叉ケ池山、安倍川最上流部に位置する山伏――五つの山を取り上げる。

◇[恵那山] 20合目へ手ごわい道筋
◇[伊吹山] 標高差十分、あきない山
◇[鎌ケ岳] 花咲く尾根道を楽しむ
◇[夜叉ケ池山] 伝説の池、社長一行祈願
◇[山伏] 法螺貝響いた?「国境」


[恵那山] 20合目へ手ごわい道筋

標高2191m しんどさ★★★☆(岐阜県中津川市・長野県阿智村)

 恵那山は古代史にも名を残す風格のある山だ。「日本近代登山の父」と称されるウォルター・ウェストンが1893(明治26)年5月に岐阜県中津川市の恵那神社から登った道をたどってきた。なかなか手ごわいルートだった。
 遠目に見ると雪がなさそうな今も、登山道は残雪が氷結し、山頂の積雪は1メートルを超える。地元自治体は、6月まではアイゼンやピッケルを持って登るように推奨している。私は降雪前の2015年10月、日本山岳会東海支部の鈴木慎吾山行委員長のパーティーに加わって登った。
 山頂までの距離は約8キロ、標高差は約1600メートルある。
 日没前に下山するため、午前5時半にヘッドランプで登り始めた。沢を二つ渡って尾根道に入り1時間40分後に5合目へ。ここで半分登ったと思ってはいけない。恵那山の頂上はなんと20合目だ。
 4時間後、標高約1800メートルの空峠(そらとうげ)に着く。立ち枯れの木のかなたに山頂が見えはじめた。根の上高原の保古(ほこ)の湖(こ)がはるか下に見下ろせた。空峠からは展望を楽しみながら、さらに2時間半登って、ようやく山頂に着いた。


 山頂は樹林に囲まれ見晴らしはよくない。東側の岩場に出ると、南アルプスから富士山の頂上付近が見えた。富士山頂から見た恵那山より小さい。ウェストンも赤石岳の南の肩にくっきりと富士山が見えたと「日本アルプスの登山と探検」で書いている。
 山頂にいたのは30分足らず。下山に4時間かかり、日没ぎりぎりに戻った。ウェストンは山頂に3時間滞在し、午後10時に中津川の宿に帰り着いた。安全のためには日の長い季節に登るルートだ。
 恵那山の名は、天照大神(あまてらすおおみかみ)が生まれたとき胞衣(えな)(胎盤)を埋めた伝説に由来する。山頂に伊弉諾尊(いざなぎのみこと)、伊弉冉尊(いざなみのみこと)を祭る恵那神社奥宮がある。北側には日本(やまと)武尊(たけるのみこと)が東征で通ったとされる神坂峠(みさかとうげ)がある。
 都人は比叡の山から伊吹山を見て登り、伊吹山から恵那山を見て登り、富士山を見た。山から山を見て、次の山を目指す。古代からの山岳開山史は案外、こんなふうに始まったと考えれば面白い。
 恵那山と伊吹山の間に、歴史的に西国とも東国とも言い切れない濃尾平野がある。この日本の真ん中と、隣接する長野県や滋賀県などの山に登る連載を隔週で始める。次回は伊吹山に登る・・・

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楽しく登るのが一番 東海地方の山ガイド
216円(税込)

登山歴4年の62歳記者が、東海地方と、隣接する長野県や滋賀県などの山を登ってリポート。登山ルートや高低図のほか、「しんどさ」も星マークで表示。「体力勝負やタイムトライアルもたまにはいいが、楽しく登るのが一番だ」。20合目まである手ごわい恵那山、新幹線から見上げると圧倒される伊吹山、アルペンムードが漂う鎌ケ岳、竜神伝説の夜叉ケ池山、安倍川最上流部に位置する山伏――五つの山を取り上げる。(2016年4月1日〜6月3日、8500字)

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