【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

社会・メディア
朝日新聞社

池袋の三つ目男 全国各地に伝わるUMA(未確認生物)伝説を追う

初出:2016年9月26日〜10月7日
WEB新書発売:2016年10月20日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

「ハッと思った瞬間、いたんですよ。人ごみの中に、その人だけがはっきり浮き上がっているように見えました。無表情で私の方に歩いてきました」東京在住の女性講談師(64)が6、7年前の出来事を教えてくれた。8月のある日の夕刻。演芸場から池袋駅に向かって歩き、階段を下りると地下の通路で三つ目の男性を見たというのである――。各地のUMA伝説をおいかける好評連載第二弾。今回は、鹿児島・奄美地方の島々に伝わる「ケンムン」、沖縄の木の精「キジムナー」、東北地方、とくに岩手県で語り継がれてきた精霊「座敷わらし」、全国に広がる「かっぱ」、山形県・大鳥池の巨大魚「タキタロウ」、鹿児島県・池田湖の「イッシー」を取り上げます。

◇第1章 木か気か、奄美のケンムン
◇第2章 6人が「実際に会った」
◇第3章 赤毛の童子はおならが苦手
◇第4章 オオカミの乳で育った男の子
◇第5章 座敷わらしが火を防いだ
◇第6章 尻の穴から魂を抜く
◇第7章 明るくてもかっぱと遊ぼう
◇第8章 池袋で出会った三つ目男
◇第9章 巨大魚タキタロウを見た
◇第10章 「何か」が誘う見えない世界


第1章 木か気か、奄美のケンムン

 漫画家の故・水木しげるがインタビューで言っていた。
 「人間の五感では把握しにくいものを、ないと言ってしまうのは簡単だが、ある種の存在感みたいなものだけがあるものも、私はあると思うのです」(絵本とキャラクターの月刊誌「MOE」)
 「ケンムン」も同じことが言えるかもしれない。東京から南西へ約1300キロ。鹿児島・奄美の島々に伝わる「妖怪」「木の精」である。
 ケンムンの「ケ」は「木」の意味。「気」説もある。「気配を感じる存在」なのだろう。ムンは、もののけの「もの」だ。
 一里(約4キロ)離れただけで、言葉や生活様式、習俗が微妙に異なる奄美。「ケンモン」「ケィンムン」「クゥイムン」とも呼ぶ。「いずれにしましても、島の人々の心に脈々と受け継がれてきたのです」と奄美大島南西部の瀬戸内町立図書館・郷土館学芸員、町健次郎(46)は言う。
 ケンムンについて書かれた文献があると聞き、奄美市立奄美博物館を訪ねた。幕末の1850年から5年間、奄美に配属された薩摩藩士・名越左源太(なごやさげんた)が調査・記録したとされる「南島雑話」である。島の暮らしぶりや風習、信仰などを絵を交えて克明に記しており、動植物を含む自然環境についても触れている。
 ページをめくっていたら、全身毛むくじゃらで頭に皿をのせた、かっぱのような絵が出てきた。「これがケンムン・・・

このページのトップに戻る