政治・国際
朝日新聞社

文化大革命を朝日新聞はどう伝えたか 検証・昭和の朝日報道

2016年11月02日
(9700文字)
朝日新聞

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 「それを書けば国外追放になるという限度があるだろう。そのときは一歩手前でとまりなさい」。1966年から約10年間、中国を未曾有の混乱に引きずり込んだ「文化大革命」。この政治動乱とそれに続く日中国交正常化を朝日新聞はどう報じたか。その背景にどんな事情があったのか。昭和期の報道を自己検証する「検証 昭和報道」より。

◇第1章 情報源は壁新聞
◇第2章 記者交換と政治三原則
◇第3章 「歴史の目撃者」論
◇第4章 広岡・朝日新聞社長が訪中
◇第5章 林彪事件
◇第6章 社論を優先
◇第7章 遅れた朝日新聞社外への説明
◇第8章 「迷惑」発言の波紋
◇第9章 台湾と断交


第1章 情報源は壁新聞

 1966(昭和41)年8月20日夜。朝日新聞北京特派員の野上正は北京随一の繁華街・王府井で「造反有理」「四旧打破」のスローガンを叫ぶ若者の一団に遭遇する。その日、街頭に飛び出し、一躍世界の注目をあびた紅衛兵だ。彼らは古い思想や文化を否定する証しに、老舗(しにせ)商店の看板を引きはがし、店内を破壊した。
 「街頭に文化革命のアラシ」「町名も一夜で塗替え」「少年紅衛兵が『実力行使』」。野上が見たままを書いた初報は22日朝刊に載った。大衆を巻き込んで燃え上がった空前の政治運動「プロレタリア文化大革命」の幕開けだった。
 文革は、これを自ら発動した毛沢東が死去し、江青夫人ら「四人組」が逮捕されるまで、10年間も続いた。今日では「党と国家と国民に大災難をもたらした内乱」(81年の中国共産党「歴史決議」)と総括され、多くの民衆には「災厄」と記憶されている。
 特派員にとって、人民日報や新華社などの公式情報はほとんど役立たず、街頭にあふれる大字報(壁新聞)の解読が重要な任務となった。
 なかでも日本人特派員は漢字が読める強みを発揮して、ベールに包まれた権力闘争の内幕や地方の動向をいち早くつかみ、一時は東京発の中国情報が世界中に配信された。朝日の外報部デスク周辺には「朝から晩まで外国特派員やその助手がすわりこんで、野上電のモニターをみせろ、とせがんだ」(『朝日新聞社史』)。
 日本の報道各社の北京特派員9人がそろって66年度のボーン国際記者賞に輝いた。
 紅衛兵運動は、街頭の打ち壊しから、「資本主義の道を歩む」実権派幹部のつるし上げ、さらに血なまぐさい派閥闘争へとエスカレート。混乱状況が海外に漏れることを警戒した中国当局は、壁新聞の取材規制に乗り出した。
 日本人特派員への警告は翌67年春から始まった。7月には朝日など数社が支局を置くホテルで、中国専門商社員数人が紅衛兵に襲われ、壁新聞の「盗撮」と紅衛兵新聞を所持していた「スパイ」の容疑で軟禁される。同様の資料を大量に保管していた野上は、考えた末に細断し、トイレに流すなどして、すべて処分した。
 そして9月10日午前、日本人特派員全員が外務省に呼び出される。報道局幹部は、まず佐藤栄作首相による直近の台湾訪問を「中国人民に対する重大な政治的挑発行為」と厳しく非難。つづいて毎日、サンケイ、西日本(北海道、中日・東京を含めた3社の代表)の各新聞に対し、「反中国報道」を理由に国外退去を求め、後任は認めないと通告した・・・

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文化大革命を朝日新聞はどう伝えたか 検証・昭和の朝日報道
216円(税込)

「それを書けば国外追放になるという限度があるだろう。そのときは一歩手前でとまりなさい」。1966年から約10年間、中国を未曾有の混乱に引きずり込んだ「文化大革命」。この政治動乱とそれに続く日中国交正常化を朝日新聞はどう報じたか。その背景にどんな事情があったのか。昭和期の報道を自己検証する「検証 昭和報道」より。(2010年1月29日〜2月10日、9700字)

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