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朝日新聞社

トランプ旋風は学びの機会 日本とアメリカを歩く

初出:朝日新聞2016年7月4日〜8日
WEB新書発売:2016年11月10日
朝日新聞

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1960年代の終わりごろまで炭坑の町として大いに栄え、目下一番の悩みはスーパーがないことという佐賀県大町町。星条旗が至る所ではためく、古き良きアメリカを思わせる町並みのニュージャージー州アレンデール。どちらも人口6千人ほどの町である。大統領選さなかのアメリカと、参院選時の日本の風景を、同じ程度に小さな町から眺めてみたいと私は思った――。20年前に姉妹都市提携を結んだ二つの町を歩いた記者のルポ。

◇第1章 日本とアメリカ、二つの町で
◇第2章 「自分で決める」星条旗の町
◇第3章 トランプ旋風 学びの機会
◇第4章 実験国家の「建国の父」たち
◇第5章 いいとこ取りの、いいところ


第1章 日本とアメリカ、二つの町で

 参院選が公示された2016年6月22日、九州の北部一帯は大変な豪雨に見舞われていた。
 佐賀県のほぼ真ん中、大町町(おおまちちょう)も例外ではない。普段でさえ人通りの少ない町なかで、まだ候補全員のポスターがそろわない掲示板が激しく吹きつける風雨に耐えていた。


 翌日、町立の小中一貫校でトム・ハート(25)に会う。ニュージャージー、どうでした? 湿気なし? それは恋しいな。ハートは母語で言うと汗ばんだワイシャツをつまんだ。往年のリンゴ・スターをハンサムにしたような青年は、外国語指導助手として派遣されて3年近く、今では児童に「コラなんばしよっと」と日本語でおどけている。
 その前の週まで、私はアメリカのアレンデールという町に行っていた。ニュージャージー州にあり、たまたまハートも同じ州から来ている。大統領選の話になるとトランプ旋風にへきえきした様子、身ぶり手ぶりを交えて終わらない。何にせよ自説をきちんと語るハートは、日本人はクワイエットですよねと言った。
 大町町もアレンデールも、人口6千人ほどの町である。大統領選さなかのアメリカの風景と、国政選挙時の日本のそれを、同じ程度に小さな町から眺めてみたいと私は思っていた。この二つの町を選んだのは、姉妹都市という理由による。ただし20年前の提携以降、互いに子供たちが行き来したのは限られた期間で、交流は途絶えて久しい。
 それでも町長室に行けば、提携時の書面や記念品が飾られていた。2015年から町長を務める水川一哉(59)は、アレンデールはもとよりアメリカを訪ねたことがない。交流再開については、先立つものがないのが実情のようだった。花火大会の復活に無駄遣い批判があると聞けば、無理もない。目下一番の悩みはスーパーがないことだという。
 消費税増税の先送りに賛否はあれ、社会保障の財源は宙に浮く。高齢、過疎が進む町で水川は思案に暮れる。このままでは町の存続さえ危うくなりかねない。「高齢者でもいいから町に来てほしい・・・

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トランプ旋風は学びの機会 日本とアメリカを歩く
216円(税込)

1960年代の終わりごろまで炭坑の町として大いに栄え、目下一番の悩みはスーパーがないことという佐賀県大町町。星条旗が至る所ではためく、古き良きアメリカを思わせる町並みのニュージャージー州アレンデール。どちらも人口6千人ほどの町である。大統領選さなかのアメリカと、参院選時の日本の風景を、同じ程度に小さな町から眺めてみたいと私は思った――。20年前に姉妹都市提携を結んだ二つの町を歩いた記者のルポ。(2016年7月4日〜8日、6400字)

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