経済・雇用
朝日新聞社

車上生活2年で気持ちすさんだ 生活保護受けられない「隠れた貧困層」

初出:朝日新聞2016年9月28日〜10月1日
WEB新書発売:2016年12月8日
朝日新聞

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さいたま市の50代男性は、生活保護を受けるまで2年ほど、車上生活だった。設備会社の職人だったが仕事が減り、数年前に警備のアルバイトを始めた。帰宅しても寝るだけ。家賃を払うのが惜しくなった。着替えや身のまわりの物を軽ワゴン車に積んだ。ふだんは車内で眠り、疲れている時だけネットカフェに泊まった。「自ら車上生活を選んだのですが、どんどん気持ちがすさんでいきました」――。200万人超の生活保護受給者の後ろに、膨大な「隠れた貧困層」がいる。安心して暮らせる手立てはあるのか。実態と解決への方向性をレポートする。

◇第1章 低年金、届かぬ生活保護
◇第2章 家賃支払い惜しく、車上生活2年
◇第3章 生活保護受給者、強まるチェック
◇第4章 保護基準引き下げ、影響広く


第1章 低年金、届かぬ生活保護

◎厳しい受給条件 ためらいも
 「毎月やりくりしても赤字が出ちゃう……」。埼玉県の女性(77)が通帳を見てため息をついた。10年前には100万円以上あった貯金が10万円を切った。40代で夫と別れ、子連れで住み込みの寮母などをして息子2人を育てた。清掃員をしていた70歳の時、高齢を理由に仕事を辞めさせられた。その後は年金頼みだ。
 女性は厚生年金の加入期間もあり、年金額は月9万円ほど。半分は家賃だ。電話代や光熱費などが1万円強。食費を削っても、貯金は目減りするばかりだ。息子たちが月2万円ずつ援助してくれると言うが、もらえない月もある。それぞれも大変で催促はできない。
 年金収入だけでは生活保護の基準以下。だが、保護の申請は踏ん切りがつかない。「生活保護は障害や病気に悩む人のための制度だと思う。昔から健康に働き、子どもを育ててきたプライドがある」。テレビは見ないし、新聞もやめた。老眼鏡のレンズも合わないが、がまんしている。
 2013年秋から、過去の物価下落時に据え置いた分の年金の減額が行われた。「これ以上、どうすればいいの」。女性は減額分の支給を求める集団訴訟の原告団に加わった。
 国民年金は満額でもらっても月6万円台に過ぎない。多くの高齢者が低年金に苦しんでいる。一方、生活保護を受ける65歳以上の高齢者世帯は約80万。低年金でも、生活保護で補えていない人たちがいる。
 主な理由は生活保護の受給条件の厳しさだ。地域や年齢で決まる「最低生活費」の1カ月分が、収入や貯金などで賄えないと判断された場合、保護が支給される。自家用車の所有は原則として不可だ。
 親族に支援できる人がいないかもチェックされる。生活保護への偏見から申請をためらう人もいる。・・・

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車上生活2年で気持ちすさんだ 生活保護受けられない「隠れた貧困層」
216円(税込)

さいたま市の50代男性は、生活保護を受けるまで2年ほど、車上生活だった。設備会社の職人だったが仕事が減り、数年前に警備のアルバイトを始めた。帰宅しても寝るだけ。家賃を払うのが惜しくなった。着替えや身のまわりの物を軽ワゴン車に積んだ。ふだんは車内で眠り、疲れている時だけネットカフェに泊まった。「自ら車上生活を選んだのですが、どんどん気持ちがすさんでいきました」――。200万人超の生活保護受給者の後ろに、膨大な「隠れた貧困層」がいる。安心して暮らせる手立てはあるのか。実態と解決への方向性をレポートする。(2016年9月28日〜10月1日、5700字)

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