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教育・子育て
朝日新聞社

「いやや」母は刃を腹に 赤ちゃん「職権保護」の瞬間〜小さないのち

初出:2016年11月18日〜11月20日
WEB新書発売:2016年12月22日
朝日新聞

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「○○ちゃんを職権保護しました」。児童福祉司が告げた。母親は叫んだ。「いやや、いやや、いややあ〜!」。母親は台所に走って包丁を取り出し、刃を自らの腹に向けたという。児童福祉司は暴れる母親の腕を必死でつかむと、近くで待機していた警察官が飛び込んできて、母親を取り押さえた――。「児童相談所(児相)」は、都道府県と政令指定市に設置が義務づけられ、全国に210カ所ある。父母の不在や虐待などにより養育が困難な子どもを一時保護する権限を持つ。2014年度に行われた一時保護は全国で3万5174件あり、47・8%は虐待が理由だった。子どもの命を救う児相の活動を追う、「小さないのち」シリーズ最新作。

◇第1章 赤ちゃん、そっと救い出した
◇第2章 子離しても、親と向き合う
◇第3章 増える虐待 すり減る心身


第1章 赤ちゃん、そっと救い出した


◎虐待死の恐れ 母のすきみて「職権保護」
 「どうかこのまま泣かないで」。西日本にある児童相談所(児相)の30代の女性ワーカー(児童福祉司)は祈るような気持ちでいた。腕の中に、母親から引き離して保護しようとしている赤ちゃんがいる。
 女性ワーカーたちはこの日午前9時ごろ、20代の母親と赤ちゃんが暮らす家を訪れた。「おじゃまします」。2人で部屋に上がって母親と話をしながら、さりげなく赤ちゃんを抱かせてもらった。ニコニコと笑い、かわいいと感じた。
 もう一人の職員が母親と話し込むすきをみて、女性ワーカーは赤ちゃんを抱いたまま玄関に向かい、外で待機していた別の職員に赤ちゃんを手渡した。その職員がその場を離れたのを確認してから、こう告げた。
 「○○ちゃんを職権保護しました」
 母親は叫んだ。
 「いやや、いやや、いややあ〜!」
 母親は台所に走って包丁を取り出し、刃を自らの腹に向けたという。
 「キャー」。今度は女性ワーカーが悲鳴を上げた。暴れる母親の腕を必死でつかむと、近くで待機していた警察官が飛び込んできて、母親を取り押さえた・・・

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