経済・雇用
朝日新聞社

他人と比較したい私たち SNSでなぜ演出が目立つのか

初出:朝日新聞2017年1月3日〜1月6日
WEB新書発売:2017年1月19日
朝日新聞

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「秒速で1億円稼ぐネオヒルズ族」としてメディアで引っ張りだこになった与沢翼さん、「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ」というブログが炎上した長谷川豊さん、タワーマンションの超高層階のパーティーで「セレブ」を気取る男女……。SNS、まとめサイト、スマホといった情報環境の変化が、人間の欲望のあり方を劇的に変えつつある。なぜSNSでは自己演出や炎上が目立つのか、なぜ手っ取り早く要点がわかる教養書が売れるのか、なぜ物を減らすミニマリズムや瞑想が注目を集めるのか。時代の雰囲気をつかむレポート。

◇第1章 輝く私、止まらぬ演出
◇第2章 能力超える、情報の海
◇第3章 きれい、内側からつくる
◇第4章 モノ手放し心みつめる


第1章 輝く私、止まらぬ演出

 虹色に輝くレインボーブリッジを見下ろす、タワーマンションの超高層階。約50人の男女がシャンパングラスを手に談笑し、気が向けばLINEの連絡先を交換する。
 最近、東京都内各所で開かれている「セレブ」対象のパーティーだ。参加者はネットで募り、女性が無料、男性が1万円。女性は客室乗務員や大学生、男性は医師、会計士、経営者ら。でもシャンパンに頬を赤らめた女性は「本当は何をやっているのか分からない人、多いですよね」。30歳前後か、黒いフリルのワンピースに異常なほど白い歯をした彼女自身、素性が分からない。
 エンジニアだという男性(35)は「全員セレブ? そんなはずないじゃないですか。そうやって振る舞わなきゃ、女性の眼中に入らないから」と皮肉めいた笑みを浮かべた

◎自称セレブのパーティー 承認求めネット炎上
 2013年、「秒速で1億円稼ぐネオヒルズ族」としてメディアで引っ張りだこになった与沢翼さん(34)。7千万円のロールス・ロイス・ファントムを乗り回し、シャンパンを浴びるように飲み、札束の前でふんぞり返った。ネットで稼ぐノウハウをまとめた情報商材が当たり、年商50億円を誇った。
 だが、「突き抜けた金持ちキャラ」を維持するために散財を続け、気がつけば法人税が払えなくなり、オフィスを差し押さえられ、車も手放し、「秒速で転落した」。
 その後、税金は完納し会社を清算。金融商品などの投資を学び、現在は中東・ドバイで暮らす。今も動静はSNSなどで発信。「もう何も隠していない。等身大の姿」と話すが、最近も再びロールス・ロイスを購入するなど、「セレブ」な暮らしぶりをアップし続ける。

 元フジテレビアナウンサーで、フリーとして活躍していた長谷川豊さん(41)は16年9月、「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!」と題してブログに投稿して批判が殺到、レギュラーの8番組すべてを降板になった。
 膨らむ社会保障費を取材する中で、医師の指示を守らず暴飲暴食を繰り返すなどして人工透析に至る患者がいることを知る。「そういう人には何らかのペナルティーも必要ではないかと伝えたかった」。話題になった「保育園落ちた日本死ね」というブログが脳裏をよぎった。「ネットでは過激な本音がビューを稼ぐ。あえて暴論や極論を書くうちにエスカレートしていった」
 何がそこまで駆り立てたのか。「世に影響を与えたいというか、存在の承認欲求でしょうか。今思えば、ネットの雰囲気に完全にのまれ、まひしていた」
・・・

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この記事の続きは、WEB新書でお読みいただけます。

他人と比較したい私たち SNSでなぜ演出が目立つのか
216円(税込)
  • 著者木村尚貴、吉川一樹、板垣麻衣子、真田香菜子、赤田康和
  • 出版社朝日新聞社
  • 出版媒体朝日新聞

「秒速で1億円稼ぐネオヒルズ族」としてメディアで引っ張りだこになった与沢翼さん、「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ」というブログが炎上した長谷川豊さん、タワーマンションの超高層階のパーティーで「セレブ」を気取る男女……。SNS、まとめサイト、スマホといった情報環境の変化が、人間の欲望のあり方を劇的に変えつつある。なぜSNSでは自己演出や炎上が目立つのか、なぜ手っ取り早く要点がわかる教養書が売れるのか、なぜ物を減らすミニマリズムや瞑想が注目を集めるのか。時代の雰囲気をつかむレポート。(2017年1月3日〜1月6日、7300字)

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