経済・雇用
朝日新聞社

世界の市場(いちば)から 世界8カ所のマーケットをめぐる

初出:朝日新聞2017年1月1日〜1月9日
WEB新書発売:2017年2月9日
朝日新聞

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「市場」と聞くと、なぜかわくわくしてしまう。そこには出会いがあり、地域の生活や風習、人情があふれている。そしてモノを売り買いするだけではなく、新たな価値を生み出すマーケットの最前線でもあった。各地の記者が世界8カ所の現場を訪ね歩いた。

◇第1章 「シャンゼリゼ通り」難民が営む商店街/ヨルダン
◇第2章 ネット×アイドル、新たな経済圏/中国
◇第3章 死者に捧げる水牛、親族で囲む絆/インドネシア
◇第4章 禁断の一杯、法を犯しても/パキスタン
◇第5章 前線部隊、装備買わないと/ウクライナ
◇第6章 アダルトサイト、島を翻弄/ニウエ
◇第7章 抱き合う、4200円の安らぎ/英国
◇第8章 花・雑貨…「歩くコンビニ」/ベトナム


第1章 「シャンゼリゼ通り」難民が営む商店街/ヨルダン

◎食料品からウェディングドレスまで
 純白、ピンク、オレンジ、青……。プレハブ造りの店のドアを開けると、明るい色のウェディングドレスが目に飛び込んできた。
 ここは「シャンゼリゼ通り」。凱旋門(がいせんもん)から延びるあのパリの通りではない。約3千キロ離れたヨルダン北部・ザアタリ難民キャンプ。約8万人が暮らす世界最大のシリア難民キャンプの中でも、とりわけ人々に親しまれる商店街があった。
 2011年、シリア内戦が始まると、国境から約10キロ、幹線道路からほど近い場所に難民が逃れてきた。砂漠の地に国連の支援でテント、次第に仮設住宅が増えると、難民が食料や日用品を売り買いする市場が生まれた。
 ここにフランス系の病院ができて、援助関係者らが「シャンゼリゼ通り」と呼び始めたという。今ではキャンプ全体に約2500の店が軒を連ねる。


 生鮮食品店の店先に新鮮な野菜や果物が並ぶ。焼きたての丸いパンや揚げたての豆製コロッケの匂いが鼻先をくすぐる。金のアクセサリーを売る店、インターネットカフェやゲームセンターまである。「ロールスロイス」と銘打った黄金色の自転車を売る店も現れた。
 12月上旬、記者は3日間、この通りに通った。驚いたのはウェディングドレス店の多さ。キャンプ内に10軒以上あるという。若者人口が圧倒的に多く、週末を中心に多くの結婚式が挙げられている。
 シャンゼリゼ通りに4年前に開店した草分けの「シリアのバラ」を訪れた。
 ムハンマド・ズウリさん(40)と、美容師のマリアムさん(30)が夫婦で営む。キャンプ外の町でドレスを仕入れ、花嫁に約4千円でレンタル、販売もする。夏のピーク時は週30組の結婚式に携わるという。
 「結婚という人々の幸せを支える仕事ですね?」
 そう問いかけたら、最初は笑顔を見せたが、のちに浮かない表情に変わった。
 「でも、それはつかの間の幸せに過ぎない。難民キャンプにいる限り、我々はいつまでも難民だから・・・

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世界の市場(いちば)から 世界8カ所のマーケットをめぐる
216円(税込)
  • 著者渡辺丘、冨名腰隆、古谷祐伸、乗京真知、松尾一郎、郷富佐子、渡辺志帆、鈴木暁子
  • 出版社朝日新聞社
  • 出版媒体朝日新聞

「市場」と聞くと、なぜかわくわくしてしまう。そこには出会いがあり、地域の生活や風習、人情があふれている。そしてモノを売り買いするだけではなく、新たな価値を生み出すマーケットの最前線でもあった。各地の記者が世界8カ所の現場を訪ね歩いた。(2017年1月1日〜1月9日、15700字)

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