経済・雇用
朝日新聞社

出版大変動 電子書籍で変わる出版ビジネス

初出:朝日新聞2017年2月7日〜2月11日
WEB新書発売:2017年3月2日
朝日新聞

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KADOKAWA会長の角川歴彦(73)のところに、「黒船」が来たのは2012年のことだった。海外企業の担当者が次々と訪れ、口々に「我々の電子書籍事業に協力して欲しい」と求めてきた。選択肢は3つ。コンテンツを提供するにとどめるか、電子書籍の配信を手がけるプラットフォームになるか、さらに進んで、端末まで出すか。角川の決断は……? 「キンドルアンリミテッド」「dマガジン」などの電子書籍・電子雑誌の読み放題サービスの普及、電子書籍でデビューする作家の出現、小説投稿サイトや新興出版社の台頭など、電子書籍が生み出した出版界の大変動を活写するレポート。

◇第1章 アマゾン流に不満噴出
◇第2章 「黒船」に対抗、自社配信にかじ
◇第3章 ネット上から作家発掘、本に
◇第4章 電子書籍で復刻 無料雑誌も
◇第5章 アマゾン読み放題「想定外なことも…」 日本幹部に聞く(友田雄介キンドルコンテンツ事業本部長)
◇第6章 電子書籍のプラットフォーマー、変革を語る(KADOKAWAの角川歴彦会長)
◇第7章 電子に行く才能、取りこぼさない(幻冬舎の見城徹社長)
◇第8章 読者獲得、ビギナーズラックだった(作家の藤井太洋氏)
◇第9章 電子雑誌のブランジスタ 有名タレントを起用できるワケ(ブランジスタの岩本恵了社長)


第1章 アマゾン流に不満噴出

 「お金が持たなくなった。キンドルアンリミテッドでの配信を中断したい」
 昨夏、ある大手出版社の役員は、アマゾンジャパンの担当者からの電話に耳を疑った。
 「キンドルアンリミテッド」は、ネット通販大手アマゾンが昨年8月に始めた新サービス。月額税込み980円の利用料で12万冊以上の和書、120万冊以上の洋書の電子書籍が読み放題になる。書籍を提供した出版社は、読まれた実績に応じてアマゾンから代金を受け取る仕組みだ。
 サービスが始まると直後から読者が殺到。アマゾンが用意した予算を超えてしまったため、この出版社の本をサービスの対象外にしたいと懇願してきたのだという。「電話一本でいきなり中断したい、と。あまりにも一方的すぎる」。この大手出版社役員は憤る。
 講談社もサービス開始早々、好評な自社の書籍の配信が止まり、昨年9月末には全1200点が見られなくなった。同10月に「配信の一方的な停止に強く抗議する」と声明を発表。社長の野間省伸(よしのぶ)(48)は「著者と話し合って提供を決めたのに、著者の方々に説明がつかない」と怒り心頭だ。
 アマゾンのキンドルコンテンツ事業本部長、友田雄介(49)は「いくつか想定外のことがあったのは事実で、出版社に対応をお願いした。公式に抗議のような形で出てしまったのは残念」と話す。
 アマゾンは日本での紙の書籍の流通で1割強、電子書籍で約半分のシェアを握ると言われる「最大の書店」。その圧倒的な販売力ゆえに、出版業界との対立が表に出ることはあまりなかった。「アンリミテッドの不手際は業界が声を上げる好機」(大手出版幹部)と、たまっていた不満が噴き出した格好だ。
 ある中堅出版社の幹部は、アマゾンから販売促進キャンペーンの提案を受けた際、「(提案に)乗ってくれないとお宅の商品は扱えません」と言われ、渋々承諾したことがある、と打ち明ける。かつてアマゾン側の提案を保留した際、自社の本がアマゾンで「品切れ」に変わった経験が脳裏をよぎったという。「書店がどんどん減るなか、アマゾンで商品が売れなくなるのは致命的だ・・・

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出版大変動 電子書籍で変わる出版ビジネス
216円(税込)

KADOKAWA会長の角川歴彦(73)のところに、「黒船」が来たのは2012年のことだった。海外企業の担当者が次々と訪れ、口々に「我々の電子書籍事業に協力して欲しい」と求めてきた。選択肢は3つ。コンテンツを提供するにとどめるか、電子書籍の配信を手がけるプラットフォームになるか、さらに進んで、端末まで出すか。角川の決断は……? 「キンドルアンリミテッド」「dマガジン」などの電子書籍・電子雑誌の読み放題サービスの普及、電子書籍でデビューする作家の出現、小説投稿サイトや新興出版社の台頭など、電子書籍が生み出した出版界の大変動を活写するレポート。(2017年2月7日〜2月11日、18400字)

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