経済・雇用
朝日新聞社

星野リゾート快進撃 「ホテル界のトヨタになる」

初出:朝日新聞2016年10月30日、31日
WEB新書発売:2017年3月16日
朝日新聞

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 温泉旅館・高級ホテルなど36施設を運営する星野リゾート。合計収入は右肩上がりだ。1991年に星野佳路代表(56)が家業を継ぐまでは長野県軽井沢町の地方旅館でしかなかった。一人の社員がフロント業務から清掃・調理・配膳までこなす「マルチタスク」で旅館を変えた。そして次は、「日本旅館」の海外展開を狙う。「『今日はすしを食べよう』という感覚で、世界で旅館に泊まる日が来る」。ホテル界のトヨタを目指す星野代表インタビューも掲載。

◇第1章 マルチタスク、旅館変えた
◇第2章 星野リゾートが目指す旅館の海外展開とは/代表に聞く


第1章 マルチタスク、旅館変えた

 10月中旬、正午過ぎ。長野県松本市の旅館の一部屋が「戦場」に変わった。
 部屋の窓を開け、空気を入れかえる。敷布団や掛け布団、まくらのシーツやカバーを次々とはぎ、新しいものをかぶせる。掃除機をくまなくかける。無表情で無言。一度も止まることなく、23分で作業を終えた。
 この旅館「界 松本」を運営する星野リゾートの4年目の社員、磯辺あやかさん(25)は「1部屋30分以内が目安。無心で動いています」。この日は満室。同僚と分担し、チェックインが始まる午後3時までに全26室を清掃した。


 夕方、動きやすい黒のシャツとズボン姿から接客用の制服に着替え、夕食の配膳サービスについた。忙しく動いていた昼間と違い、「ゆっくり動き、話すことを意識しています」。翌朝はフロントにいた。チェックアウトした客の荷物を車まで運び、車が見えなくなるまで手を振り続けた。


 フロント係はフロントだけ、清掃係は清掃だけ。そんな旅館やホテルの一般的な働き方とは違い、星野リゾートでは大半の社員が、フロント業務、客室清掃、朝夕食の調理、配膳サービスの4種目をこなす。社内で「マルチタスク」と呼ばれる取り組みだ。
 かつては分業制だった。調理担当は朝食後は夕食までやることがなく、一度帰宅してまた出てきた。客室清掃担当は昼間の3時間しか仕事がなかった。業務ごとにムダやムラがあった。
 客は午後にチェックインしてから夕食、翌日の午前にチェックアウト。行動はパターン化している。客の動きに対応して従業員が働けば効率が高まる。担うのは正社員。宿泊業全体で正社員率は5割弱と言われるが、同社の宿泊施設では約8割。ムラがなくなり、業務のムダをなくす「カイゼン」も自主的に行う。

◎脱分業、10年磨き急成長
 星野リゾートは温泉旅館「界」の他、高級ホテル「星のや」やスキー場など36施設を運営。全施設の合計収入は右肩上がりだ。
 同社を一躍有名にしたのは、経営難に陥った各地の旅館やリゾートを再生させたビジネスの手腕だ。だが、1991年に星野佳路(よしはる)代表(56)が家業を継ぐまでは、長野県軽井沢町の地方旅館でしかなかった・・・

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星野リゾート快進撃 「ホテル界のトヨタになる」
216円(税込)

温泉旅館・高級ホテルなど36施設を運営する星野リゾート。合計収入は右肩上がりだ。1991年に星野佳路代表(56)が家業を継ぐまでは長野県軽井沢町の地方旅館でしかなかった。一人の社員がフロント業務から清掃・調理・配膳までこなす「マルチタスク」で旅館を変えた。そして次は、「日本旅館」の海外展開を狙う。「『今日はすしを食べよう』という感覚で、世界で旅館に泊まる日が来る」。ホテル界のトヨタを目指す星野代表インタビューも掲載。(2016年10月30日、31日、5400字)

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