経済・雇用
朝日新聞社

虎屋の家訓 創業500年を超えて革新を続けられる秘密

初出:朝日新聞2017年1月7日〜8日
WEB新書発売:2017年4月13日
朝日新聞

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室町時代の京都で創業した和菓子の老舗、虎屋は、誰もが知る伝統ブランドであるにも関わらず、新ビジネスの開拓や新製品の開発に、意欲的に取り組んでいることで知られる。伝統と革新を両立させられる秘訣は、どこにあるのか。天正年間(1573〜92)につくられたとされる、従業員に仕事の心構えを説く指南書「掟書(おきてがき)」など、伝統を維持するための知恵を紹介しながら、その秘密に迫る。

◇第1章 虎屋 命の「あん」、和洋を超えて
◇第2章 こけし修業、発信力磨く
◇第3章 「掟書」の心、いまも
◇第4章 虎屋・黒川光博社長「大切なのは今。言い続けている」


第1章 虎屋 命の「あん」、和洋を超えて

 JR新宿駅新南口そばに、白いタイルに描かれた2匹の虎が目を引くカフェがある。「TORAYA CAFE・AN STAND(トラヤカフェ・あんスタンド)」。創業500年ほどの和菓子屋、虎屋のグループ会社が昨年4月にオープンさせた新型店だ。
 売りは和と洋が融合した「あんペースト」。冬季限定の「柚子(ゆず)」は、虎屋の白あんをベースに国産柚子とホワイトチョコレートが混ざり合い、まろやかな甘さに爽やかな柚子の香りがからむ。三浦純店長(33)は「アイスクリームやヨーグルトと相性が抜群です」。
 こしあんのあんペーストをコッペパンにはさんだ「あんコッペ」も人気。こしあんには黒砂糖やメープルシロップを加えた。


 出店を担当したのは17代当主、黒川光博社長(73)の長男、光晴専務(31)だ。「若者の興味を誘うため、『あん』を『AN』と表現した。和菓子の根幹、あんのおいしさを知って欲しい」
 虎屋は2003年にトラヤカフェの1号店を東京・六本木ヒルズに出店。07年にはギャラリーを設けた東京ミッドタウン店、静岡県御殿場市に庭園と菓子づくりが見学できる「とらや工房」をつくるなど、新しい取り組みに挑戦してきた。
 1号店の開設にあたって社内では消極的な意見もあった。「虎屋の名前に傷がつくのでは」「失敗したらどうするのか」。虎屋は中小が多い和菓子メーカーとしては大手。業界はバブル崩壊後、法人需要の低迷や後継者難に直面したが、虎屋の業績は堅調だった。
 ただ、黒川社長には「このまま続けていけるのか」という不安があった。伝統に縛られ、社内が保守的になっているのではないか。歴史があっても将来が保証されているわけではない。
 「新しい取り組みをして欲しい」。ヒルズ側の誘いは渡りに船だった。黒川社長は「『虎屋が一番だ』と思うのが一番ダメ。そこで成長が止まってしまう・・・

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虎屋の家訓 創業500年を超えて革新を続けられる秘密
216円(税込)

室町時代の京都で創業した和菓子の老舗、虎屋は、誰もが知る伝統ブランドであるにも関わらず、新ビジネスの開拓や新製品の開発に、意欲的に取り組んでいることで知られる。伝統と革新を両立させられる秘訣は、どこにあるのか。天正年間(1573〜92)につくられたとされる、従業員に仕事の心構えを説く指南書「掟書(おきてがき)」など、伝統を維持するための知恵を紹介しながら、その秘密に迫る。(2017年1月7日〜8日、5900字)

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