医療・健康
朝日新聞社

息子の金を盗んでパチンコ 病的賭博(ギャンブル依存症)の実態

初出:朝日新聞2017年2月20日〜24日
WEB新書発売:2017年4月13日
朝日新聞

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パチンコ代で膨れ上がった借金に困った男性は、やがて常軌を逸したところから金を入手するようになった。母親に嘘をついて金をせびり、息子2人の机をこじ開け、お年玉を盗んだ。次に子供の通う学校の担任や教頭からお金を借りるようになった――。病的賭博(ギャンブル依存症)で精神病医に入院したことをきっかけにパチンコから足を洗い、依存症患者の自助グループを設立した男性(60)の体験談。

◇第1章 「大勝ちすれば金返せる」
◇第2章 息子の担任からも借金
◇第3章 金使い切り3カ月入院
◇第4章 人とのつながりが命綱
◇第5章 情報編 自助グループ参加、有効


第1章 「大勝ちすれば金返せる」

 1月中旬の午後7時過ぎ、北九州市にある公民館の一室で、ギャンブルやアルコールなどの依存症患者らが週1度集う「北九州無限会」の例会が始まった。
 「今日は年末年始のことを話してもらいましょう」。司会の男性(60)がそう切り出した。匿名で参加する無限会では自分を「一心(いっしん)」と名乗っている。小説「大地の子」(山崎豊子著)の主人公で、波乱の人生を送った陸一心からとった。パチンコがやめられずに借金を重ね、45歳の時、ギャンブル依存症と診断、3カ月入院した。それから15年間一度も再発せずにきている。
 一心さんがパチンコを始めたのは、山口県内の大学1年生の時だ。たまに遊んで、2千円ほど勝てばうれしかった。
 卒業後は製薬会社に勤め、同僚の女性と結婚。スポーツ用品店に転職した25歳ごろからパチンコが習慣づいてきた。給料が出た後、手元に一番金がある時期を中心に週1、2回通った。
 30代になったある休日朝、2千円の元手で始めると大当たりとなり、その日の夕方までに28万円を稼いだ。気持ちがカーッとのぼせた。妻や子にもそれぞれ5千円の小遣いを与えた。「この金をもっと増やそう」。仕事の後や休日に通い詰めた。だが、もうけも3カ月後にはパチンコに消えた。
 「よくパチンコに行くねえ」という程度だった妻も、あまりの金遣いの荒さに、金を簡単に渡さなくなった。「くれんかったら、給料もらっても一銭もやらんぞ」と声を荒らげたこともある。
 金がもらえなくなると、地元の駅前にある大手消費者金融で金を借りた。最初はドキドキしながら店に入り、「10万円ほど借りたい」と伝えた。すると、「50万円まで借りられます」と、店員が言う。言われるまま、限度額の50万円を借り、その足で近くのパチンコ店へ入った。
 負けを巻き返そう。意気込みとは裏腹に、1万円札はあっという間に消えた。「1万円札が紙切れに見えた」。借金を繰り返し、月給20万円のうち、利息返済だけで月8万円を費やした。「大勝ちすれば一気に返せる」。ますますそう思うようになっていた・・・

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息子の金を盗んでパチンコ 病的賭博(ギャンブル依存症)の実態
216円(税込)

パチンコ代で膨れ上がった借金に困った男性は、やがて常軌を逸したところから金を入手するようになった。母親に嘘をついて金をせびり、息子2人の机をこじ開け、お年玉を盗んだ。次に子供の通う学校の担任や教頭からお金を借りるようになった――。病的賭博(ギャンブル依存症)で精神病医に入院したことをきっかけにパチンコから足を洗い、依存症患者の自助グループを設立した男性(60)の体験談。(2017年2月20日〜24日、4800字)

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