文化・芸能
朝日新聞社

歌舞伎を支える裏方の匠たち 職人芸の極みを覗く

初出:朝日新聞2017年1月4日〜1月13日
WEB新書発売:2017年4月13日
朝日新聞

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 毎年の幕開けを告げる歌舞伎の新春興行は、東京・銀座の歌舞伎座のほか、浅草公会堂、新橋演舞場、大阪松竹座、国立劇場の5劇場で公演が実施され、二十数万人の観客を集める。俳優はもちろん忙しいが、舞台装置、衣装、小道具を準備する人々の苦労もなみひととおりではない。昔からの伝統の技術を守りながら、最新の技術導入にも貪欲な、そんな職人たちの心意気を探ってみた。【登場する「匠」】柝(拍子木)、附帳作りを担う狂言作者、衣装担当の職人、かつらを用意する床山、大道具、背景画の「絵描き」、小道具、歌舞伎俳優、そして「超歌舞伎『今昔饗宴千本桜』」を松竹と共同で制作した「ニコニコ動画」のIT企業ドワンゴなど。

◇第1章 初芝居、年末年始の大車輪
◇第2章 附帳が結ぶ、俳優と専門集団
◇第3章 すきっと大道具、時重ね小道具
◇第4章 江戸のエンタメ、発注会議
◇第5章 暗号交え3時間、舞台が見えた
◇第6章 ケレンの技、相勤め申し候
◇第7章 「そこまでやるか?」が次を生む


第1章 初芝居、年末年始の大車輪

 新しい年の歌舞伎の幕が開いた。
 めでたさ、華やかさ、楽しさ、にぎやかさ。そして、厳かさ――。
 初春の心持ちと歌舞伎とは、ことのほか相性がいい。
 東京・銀座の歌舞伎座は2日、松本幸四郎、中村吉右衛門、坂東玉三郎らが顔をそろえて初日を迎えた。一年を通して歌舞伎を上演し、いつも「ハレ」の雰囲気があふれているこの劇場も、1月は、また格別の顔を見せる。
 門松に迎えられて正面玄関を入ると、紅白の繭玉や大凧(おおだこ)、扇などがあしらわれた正月飾りが目に入る。ロビーには、でんと立派な鏡餅。くらしの中で季節感が薄れつつあるいま、美しく演出された「正月気分」を味わうのも、初芝居の楽しみだ。
 今月は東西5劇場で歌舞伎が上演されている。東京では歌舞伎座に加え、20代中心の「浅草歌舞伎」と、新橋演舞場での三代目市川右團次(うだんじ)の襲名披露。大阪松竹座は八代目中村芝翫(しかん)らの襲名披露だ。この4座は松竹が製作する。
 国立劇場(東京)でも尾上菊五郎らの「通し狂言しらぬい譚(ものがたり)」が始まった。
 いずれも公演は25日間。合計すると二十数万人の観客が見込まれ、歌舞伎人気の高さを示している。
 時間の長短はあるが、毎日上演されている演目は25。俳優はもちろん大車輪だが、舞台装置を飾り、衣裳(いしょう)やかつら、小道具を整えるスタッフの仕事もまた膨大だ。しかも先月26日の千秋楽から、年越しを挟んで初日までは実質4〜5日。この厳しい日程を舞台裏で、各分野の専門技術者ががっちり支えている。
 そんな匠(たくみ)たちを訪ねると、昔からの技を守る一方で、現代の技術や素材を使い、新しい伝統を作ることにも熱心だった。若手も数多く働く。
 松竹副社長で演劇本部長の安孫子正(68)は言う。「職人は前の時代から受け継いだ技術を衰えさせてはいけないと懸命に修業する。一方で、その時々の先端技術も取り入れる。歌舞伎はその両輪で進化してきたのです・・・

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歌舞伎を支える裏方の匠たち 職人芸の極みを覗く
216円(税込)

毎年の幕開けを告げる歌舞伎の新春興行は、東京・銀座の歌舞伎座のほか、浅草公会堂、新橋演舞場、大阪松竹座、国立劇場の5劇場で公演が実施され、二十数万人の観客を集める。俳優はもちろん忙しいが、舞台装置、衣装、小道具を準備する人々の苦労もなみひととおりではない。昔からの伝統の技術を守りながら、最新の技術導入にも貪欲な、そんな職人たちの心意気を探ってみた。【登場する「匠」】柝(拍子木)、附帳作りを担う狂言作者、衣装担当の職人、かつらを用意する床山、大道具、背景画の「絵描き」、小道具、歌舞伎俳優、そして「超歌舞伎『今昔饗宴千本桜』」を松竹と共同で制作した「ニコニコ動画」のIT企業ドワンゴなど。(2017年1月4日〜1月13日、9100字)

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