教育・子育て
朝日新聞社

中華街の寺子屋 老師が見つめる多文化社会の子供たち

2017年04月20日
(9000文字)
朝日新聞

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「符老師(フーラオシー)、你好(ニーハオ)!」。日本最大のチャイナタウン、横浜中華街には、戦前から暮らす「老華僑」、80年代後半に来日した「新華僑」、さらにその後の「新新華僑」など、3万5000を超す中国・台湾の人々が暮らし、中国、台湾ゆかりの日本人も合わせ、独特の社会が形成されている。そんな中華街に長く暮らす華僑や、新たに来日した中国人の子供たちに学校の勉強や日本語を教えようと、符順和老師(先生)が2004年に開設した「寺子屋」には、様々な背景を持つ子供たちが集っている。そんな子供たちを通じて、異なる文化や価値観が混じり合う、中華街の不思議な魅力を映し出すルポ。

◇第1章 符老師が教えてくれる
◇第2章 「日本人の友達つくりたい」
◇第3章 日本式お正月、お餅にわくわく
◇第4章 「中国も日本もとってもいい」
◇第5章 餃子に獅子舞…春節大好き
◇第6章 高校生が老師「一緒に読もうね」
◇第7章 中華学校、日本人の子も通う
◇第8章 今日も元気に「老師再見!」


第1章 符老師が教えてくれる

 横浜中華街。春節(旧正月)を間近に控えた街は今、イルミネーションで華やかに彩られ、大通りは多くの観光客でごった返す。そこからちょっと離れた通りに建つビルの4階に、毎日夕方になると中華街の子どもたちが集まる。
 「寺子屋(在室)」
 ビルの入り口にこの看板が出ていれば、いつでもどうぞ。ランドセルを背負った学校帰りの子どもたちが、元気いっぱいのあいさつとともにドアを開ける。「符老師(フーラオシー)、你好(ニーハオ)!」
 「寺子屋」は、横浜山手中華学校で長年教員を務めた符順和さん(72)が開く塾だ。横浜に長く暮らす華僑の子どもや、新たに来日した中国人の子どもたちに学校の宿題や日本語を教えようと、中華学校を退職後の2004年に開いた。日曜日以外は毎日開き、今は小学1年から6年生まで32人がやってくる。
 通ってくる子どもたちは、生まれた場所も育った場所も、みんなそれぞれ違う。


 午後1時半、寺子屋が開く。まずやってくるのは、学校が早く終わる小学1年生たち。
 制服姿でやってきたのは、真凜ちゃん(7)。大陸系の学校「横浜山手中華学校」の1年生。ちょっと遅れて同じ学校に通う3年生の姉の香凜ちゃん(9)も到着。取りかかるのは学校の宿題だ。中国語の作文、算数の計算式……。
 香凜ちゃんが隣の同級生と話し始めると、符老師が中国語で一言。「不要告訴(プーヤオカオスー)(教えちゃダメ)」。すると香凜ちゃんがすかさず日本語で「教えないよ!」と笑顔で返す。
 姉妹の家は、中華街の人気料理店。祖父も父も横浜の中華学校で学んだ。姉妹は日本語も中国語もどちらも「没問題(メイウェンティー)(問題なし)」だ。
 午後3時近く。寺子屋のすぐ近くにある台湾系の学校「横浜中華学院」の3年生、翔太君(9)と結衣ちゃん(9)がやってきた。
 2人とも両親は日本人で、小さい頃、父親の転勤で家族で台湾に住んでいた。結衣ちゃんは「せっかく覚えた中国語。台湾でたくさんの人にお世話になったから、言葉も文化も忘れたくない」と、中華学院に入学した。学校の授業は中国語。学校で分からなかったところは符老師が教えてくれるから、めきめきと腕を上げている。「符老師、うまく書けたの、見て!」と、宿題が終わると結衣ちゃんはいつもご機嫌だ・・・

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中華街の寺子屋 老師が見つめる多文化社会の子供たち
216円(税込)

「符老師(フーラオシー)、你好(ニーハオ)!」。日本最大のチャイナタウン、横浜中華街には、戦前から暮らす「老華僑」、80年代後半に来日した「新華僑」、さらにその後の「新新華僑」など、3万5000を超す中国・台湾の人々が暮らし、中国、台湾ゆかりの日本人も合わせ、独特の社会が形成されている。そんな中華街に長く暮らす華僑や、新たに来日した中国人の子供たちに学校の勉強や日本語を教えようと、符順和老師(先生)が2004年に開設した「寺子屋」には、様々な背景を持つ子供たちが集っている。そんな子供たちを通じて、異なる文化や価値観が混じり合う、中華街の不思議な魅力を映し出すルポ。(2017年1月12日〜1月22日、9000字)

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