政治・国際
朝日新聞社

石油の先に何を見るのか? 変わるサウジアラビア

初出:朝日新聞2017年3月7日、3月8日
WEB新書発売:2017年4月27日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

 サウジアラビアのサルマン国王(81)が2017年3月12〜15日、日本を訪問した。サウジ国王の訪日は46年ぶりだった。世界最大級の産油国はいま、石油依存からの「脱却」を掲げた改革のまっただなか。イスラム教の伝統と国際競争の間で揺れる社会と経済、膨らむ日本への期待と最新事情を報告する。

◇第1章 脱オイル依存、王子の賭け
◇第2章 ばらまき慣れ・宗教、改革の壁


第1章 脱オイル依存、王子の賭け

 青いつなぎ姿の従業員が、アラビア語のラベルがついた容器に液体を流し込む。サウジ東部、ペルシャ湾に面した都市ダンマンにあるサウジインダストリアルペイント社(SIPCO)。プラント向けなどの防食塗料を製造する国内大手だ。
 日本の関西ペイントが、関連会社を通じて同社の買収を決めたのは昨年8月。石油関連施設の補修など安定した需要に加え、人口増加の続くサウジで今後、住居建築向けなどに事業を拡大する方針だ。
 許認可手続きの遅さや不透明さなど、日本企業の中東進出には常に「壁」が立ちはだかってきた。だが、今回の買収や工場の新設計画について、サウジ側の窓口となるサウジアラビア総合投資院は、手続きの迅速化など全面支援を表明。石野博社長は「サウジは本気で改革を進めようと腹をくくっている。リスクはあっても、今が進出の時だと判断した」と語る。

◎価格下落で財政危機
 アラブ諸国で最大の経済規模を持つサウジがいま、1932年の建国以来の改革に取り組んでいる。38年に大規模な油田が発見されて以来、その輸出収入に経済のほとんどを依存してきた石油から「脱却する」と、目標は壮大だ。
 背景にあるのは、このままでは国民を養えなくなるという危機感だ。政府歳入の7割をまかなう原油の価格は、国際的な指標となる米国WTIの先物が2014年7月に1バレル=100ドルを割り、昨年2月には同26・05ドルに下落した。世界的な経済危機や景気循環による過去の価格低迷と違い、今回は北米の「シェール革命」による構造変化が根底にある。価格の急回復は見込みにくい。
 サウド家が権力を世襲するサウジでは、主権を預かる政府が国民を養うという暗黙の「契約」がある。ただ、人口は過去30年あまりで3倍超に急増。政府が支出を減らすのは難しい。
 結果、予算は歳出が歳入を上回る状態が続く。赤字幅も15年1450億リヤル(4兆3千億円)、16年3262億リヤル、17年1980億リヤルと巨額だ。
 財政悪化のさなか、15年に即位したサルマン国王が起死回生の改革を託したのが、七男のムハンマド副皇太子(31)だ。行政経験がほとんどない王子を、国防相や経済のとりまとめを担う経済開発評議会の議長に指名した当初は、「身内びいきの典型」と批判された。ただ、その若さが改革の成否を握るカギになるかもしれない・・・

購入する

この記事の続きは、WEB新書でお読みいただけます。

石油の先に何を見るのか? 変わるサウジアラビア
216円(税込)

サウジアラビアのサルマン国王(81)が2017年3月12〜15日、日本を訪問した。サウジ国王の訪日は46年ぶりだった。世界最大級の産油国はいま、石油依存からの「脱却」を掲げた改革のまっただなか。イスラム教の伝統と国際競争の間で揺れる社会と経済、膨らむ日本への期待と最新事情を報告する。(2017年3月7日、3月8日、4600字)

    スマートフォン、タブレットでも読めます。

    Facebookでのコメント

    このページのトップに戻る