文化・芸能
朝日新聞社

象徴天皇の揺るがぬ信念 退位決定までの攻防を振り返る

初出:朝日新聞2017年4月11日〜13日
WEB新書発売:2017年5月11日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

 歴史上、初めて即位時点から憲法で象徴と定められた明仁天皇。高齢となり、全身全霊で務めを果たせなくなったとして、退位する見通しとなった。退位の意向の表明から、特例法制定決定に至るまでの過程に何があったのか。天皇陛下の退位に向けた思いをたどりながら、首相官邸や宮内庁での攻防を検証する。

◇第1章 退位、陛下の揺るがぬ信念
◇第2章 その時、官邸は
◇第3章 官邸、特例法へシナリオ
◇第4章 与野党、玉虫色の法整備


第1章 退位、陛下の揺るがぬ信念

◎初報「事実無根ではない」
 2017年1月23日。天皇陛下の退位をめぐる政府の有識者会議は、今の陛下に限った退位を推奨する論点整理をまとめ、安倍晋三首相に手渡した。事実上、政府が検討する「一代限り」の方針を後押しする内容となった。
 記者会見で今井敬座長は、一代限りとした理由として「譲位はもともと非常に問題」「皇統の継続に非常に問題があることを理解して欲しい」と語った。
 宮内庁関係者によると、この言葉に、納得がいかない表情を浮かべた人物がいた。天皇陛下だった。
 陛下の退位の意向は、象徴天皇の理想像を完遂させる思いからだ。即位以降、象徴のありようを模索し、ハンセン病療養施設や被災地の訪問を重ねるなど、国民に寄り添う姿勢を貫いてきた。体力の衰えによりその活動ができなくなるなら、次の世代に譲るべきだという信念があった。
 歴代の歩みで、譲位した天皇は58人。「譲位は歴史的にも驚くようなことではない」と周囲に語り、鎌倉幕府と戦った後鳥羽上皇など一時期をのぞけば、譲位があったからこそ平和に代替わりできたとの歴史認識も繰り返し口にしたという。
 陛下が有識者会議の検討に口を挟むことはなかったが、この間の宮内庁の対応に、陛下の思いに沿おうとする姿勢がうかがえた。
 例えば2016年11月、西村泰彦次長は会見で「公務を大幅に減らすのは難しい」と述べ、陛下が大切にしてきた公務が縮小されないよう有識者会議に釘を刺した。
 陛下の強い意思は、16年7月13日夜にNHKが「生前退位」の意向と最初に報じたときにも表れる。放送後、宮内庁の山本信一郎次長(当時)は、報道陣に「報道されたような事実は一切ない。事実無根」と火消しにまわったが、静養先の葉山御用邸(神奈川県葉山町)でそのやり取りの報告を受けた天皇陛下は、こう語ったという。
 「事実無根? 無根ではないですよね・・・

購入する

この記事の続きは、WEB新書でお読みいただけます。

象徴天皇の揺るがぬ信念 退位決定までの攻防を振り返る
216円(税込)

歴史上、初めて即位時点から憲法で象徴と定められた明仁天皇。高齢となり、全身全霊で務めを果たせなくなったとして、退位する見通しとなった。退位の意向の表明から、特例法制定方針決定に至るまでの過程に何があったのか。天皇陛下の退位に向けた思いをたどりながら、首相官邸や宮内庁での攻防を検証する。(2017年4月11日〜13日、6300字)

    スマートフォン、タブレットでも読めます。

    Facebookでのコメント

    このページのトップに戻る