経済・雇用
朝日新聞社

アベノミクスの罠 公的マネーが作り出した官製市場の歪み

初出:朝日新聞2017年3月2日〜4日
WEB新書発売:2017年5月18日
朝日新聞

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「日本銀行の買いが入りそうやな」一回の取引で200万円をかせいだこともある、大阪市に住むデイトレイダーの男性(38)は、2016年2月のある日の午前中、十数台並んだモニターを見ながらつぶやき、午後に買い注文を入れた――。アベノミクスの金融緩和政策で、日本銀行などから流れ込む公的マネーが市場を支える歪な構図が続いている。ETF(上場投資信託)を年6兆円購入する日本銀行は、2016年末時点で、ユニー・ファミリーマートホールディングスの株の12・4%を間接的に保有する大株主。2017年末には、保有比率は15・5%に拡大する見込みだ。目標としたデフレ脱却は達成できず、他方、少しでもETF買い入れを減らせば市場崩壊を招きかねない――そんなジレンマに陥ったアベノミクスに出口はあるのか。改めて考えてみた

◇第1章 「来るか日銀」的中競争
◇第2章 Jリート市場「すでにバブル」
◇第3章 官製相場、遠のく出口


第1章 「来るか日銀」的中競争

 大阪市に住むデイトレーダーの男性(38)は2月中旬、パソコンを見ながら、つぶやいた。「日本銀行の買いが入りそうやな」
 自宅のトレーディングルームには十数台のモニターが並ぶ。男性が取引するのは、ETF(上場投資信託)と呼ばれる金融商品だ。日銀が金融政策の一環として購入している。
 男性が、日銀の「買い」が入ると見るのは、日経平均株価が午前中に大きく値下がりしたときだ。すかさず日経平均に連動して値動きするETFや株を買い、値上がりした所で売って、もうけを狙う。
 この日午前の終値は、前日終値より110円安だった。午後の取引が0時半に始まると、間髪入れずETFを購入した。やがて日経平均が上昇に転じ、わずか十数分で数万円の利益を得た。1回の取引で200万円ほど稼いだこともある。
 12年前に株取引を始めた男性は、5年前に始まったアベノミクス相場による株高で波に乗り、これまで2・5億円もうけた。一戸建ても新車も手に入れた。「日銀のおかげで、株価が下がらない安心感がある」
 日銀はETFを購入した日の夕方にホームページで買い入れ額を公表する。男性が確認すると、予想通り、日銀はこの日だけで704億円を買っていた・・・

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アベノミクスの罠 公的マネーが作り出した官製市場の歪み
216円(税込)
  • 著者神山純一、座小田英史、松浦新、竹山栄太郎、神山純一、益満雄一郎
  • 出版社朝日新聞社
  • 出版媒体朝日新聞

「日本銀行の買いが入りそうやな」一回の取引で200万円をかせいだこともある、大阪市に住むデイトレイダーの男性(38)は、2016年2月のある日の午前中、十数台並んだモニターを見ながらつぶやき、午後に買い注文を入れた――。アベノミクスの金融緩和政策で、日本銀行などから流れ込む公的マネーが市場を支える歪な構図が続いている。ETF(上場投資信託)を年6兆円購入する日本銀行は、2016年末時点で、ユニー・ファミリーマートホールディングスの株の12・4%を間接的に保有する大株主。2017年末には、保有比率は15・5%に拡大する見込みだ。目標としたデフレ脱却は達成できず、他方、少しでもETF買い入れを減らせば市場崩壊を招きかねない――そんなジレンマに陥ったアベノミクスに出口はあるのか。改めて考えてみた(2017年3月2日〜4日、4800字)

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