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朝日新聞社

山に登った薬剤師たち 過疎化・高齢化の処方箋

初出:朝日新聞2017年2月14日〜21日
WEB新書発売:2017年5月25日
朝日新聞

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 医師や看護師に比べ、薬剤師というのは、名称は知っているがあまりなじみがない、という人は多いだろう。四国地方で活動するNPO法人「山の薬剤師たち」メンバーらの奮闘を追った。一緒にお菓子を広げて住民の話を聞く。薬の処方というより、自分が行くこと自体が「治療」になっている、と感じることもある。過疎化と高齢化が進む山間部での活動には苦労も多いが、こういう薬剤師が地域を支えている。

◇第1章 薬剤師、暮らしも見守る お年寄りのもとへ、集落巡る
◇第2章 必要性説き、医師説得 4カ月通いつめ、熱意で動かす
◇第3章 医師に支えられ根付く 確実に服用、治療効果上がる
◇第4章 通院の「足」住民が担う 「助け合うのが当たり前」
◇第5章 医薬連携、新施設で一層 地区が続く限り、寄り添う


第1章 薬剤師、暮らしも見守る お年寄りのもとへ、集落巡る

 曲がりくねった狭い坂道を車が走り抜け、大きな木造の一軒家の前で止まる。美馬市南部の山あいにある木屋平地区。一人暮らしの森西ヒサシさん(89)宅に、薬剤師の大林秀樹さん(44)がやってきた。
 週に1度の服薬指導。大林さんは、居間の壁に掛けられた「お薬カレンダー」に持参した薬を入れる。いつ、どれを飲めばいいか一目でわかるよう、曜日、時間帯ごとのポケットに小分けにする。森西さんの血圧、体温、体重を測り「あれ、ちょっと血圧高いなぁ」。
 大林さんはNPO法人「山の薬剤師たち」のメンバーだ。理事長で薬剤師の瀬川正昭さん(63)とともに2010年4月、地区中心部に「こやだいら薬局」を開いた。薬局の業務の一環で、お年寄りの家を訪ねて薬の飲み方や生活習慣について助言したり、集落ごとに健康教室を開いたりしている。
 医師や行政と連携しながら、住民一人ひとりの健康や家庭環境に目を配り、暮らしを丸ごと支える。そんな地域医療の実践に学ぼうと、全国の医療関係者が視察に訪れる。


 地区は05年の合併前は木屋平村で、面積約100平方キロメートル。いま住民は381世帯、662人で、約半数が70歳以上。病院や施設に入っている人もいて、空き家が目立ち、実際は500人ほどという。
 普段の買い物は、3軒の商店と週2回の移動販売が頼り。薬局には薬剤師の瀬山浩市郎さん(29)と中野真代さん(33)ら4人の常勤職員がいて、処方薬以外に、マスクやオムツなど日用雑貨も販売している。
 薬局の人たちは、車を持たないため店に来るのが難しい住民らの家を、週に20軒ほど回る。薬を飲んでいるか、副作用が出ていないか、体質や症状に合っているか。暮らしぶりを見ながら確かめる。
 しばらく顔を見ていない人が気がかりで、予定外の家に行くことや、訪問先の近所についでに寄ることも、しょっちゅうだ・・・

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山に登った薬剤師たち 過疎化・高齢化の処方箋
216円(税込)

医師や看護師に比べ、薬剤師というのは、名称は知っているがあまりなじみがない、という人は多いだろう。四国地方で活動するNPO法人「山の薬剤師たち」メンバーらの奮闘を追った。一緒にお菓子を広げて住民の話を聞く。薬の処方というより、自分が行くこと自体が「治療」になっている、と感じることもある。過疎化と高齢化が進む山間部での活動には苦労も多いが、こういう薬剤師が地域を支えている。(2017年2月14日〜21日、7600字)

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