社会・メディア
朝日新聞社

フェイクニュースの作り方 個人がメディアを持つ時代

初出:朝日新聞2017年4月29日〜5月3日
WEB新書発売:2017年6月1日
朝日新聞

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 関西在住のある男性は、最近まで「パクリ記事」を書いていた。米アリゾナ州の男性は、大統領選に合わせてウソのニュースを公開していた。「cnn.com.de」など、大手メディアに似せたサイトを作るのだという。個人で情報を発信するのが当たり前になり、宣伝と気づかせないように宣伝する「ステルス・マーケティング」が流行する時代になったが、ネットを離れれば商業社会の枠組みは変わらず、「カネを稼ぐ」必要がある。そこに不正の余地がある。「ニセモノ」が公然と出回る今はまだ過渡期なのか。過渡期だからこそ、悪質なものには怒りの声を上げていく必要がないか。

◇第1章 虚偽拡散、気づけば「真実」
◇第2章 作り話?私は信じてる
◇第3章 真偽不確か、政治家も発信源
◇第4章 「ファースト」でない私は?
◇第5章 コピペ記事、月収350万円
◇第6章「命に優劣」こそ問題なのに


第1章 虚偽拡散、気づけば「真実」

 昨年の米大統領選で、トランプ旋風とともに全米に広がったフェイクニュース。「火付け役」の一人に会おうと、アリゾナ州フェニックスを訪ねた。男性は、半袖シャツ姿で待ち合わせ場所のレストランに現れた。
 ポール・ホーナー(38)。株のネット取引などで稼ぐかたわら、abcnews.com.co▽cnn.com.de▽nbc.com.co――といった、大手メディアに似せたサイトを次々と開設。でっち上げのニュースを選挙序盤から発信した。
 最も反響を呼んだ一つが、クリントン陣営がカネで人を集め、トランプの集会に「抗議者」として送り込んだという記事だ。「3500ドルを支払われ、トランプの集会で抗議した 反トランプ派が暴露」との見出しで拡散。トランプの次男や現大統領顧問のケリーアン・コンウェイもツイートした。
 米ネットメディア「バズフィード」の分析では、投票直前の3カ月間にフェイスブックで反響があったフェイクニュースの第11位に。シェアやコメントの総数は約38万件に達した。同時期の上位20位までの反響数の合計では、フェイクニュースは871万件にのぼり、737万件の「リアルニュース」を上回っていた。
 トランプが大統領選で勝利すると、米内外のメディアから取材が殺到。「トランプをホワイトハウスに入れた男」などと報じられた。だが、ホーナーは「俺はトランプが嫌いだ。後押しするつもりはなかった」と主張する・・・

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フェイクニュースの作り方 個人がメディアを持つ時代
216円(税込)

関西在住のある男性は、最近まで「パクリ記事」を書いていた。米アリゾナ州の男性は、大統領選に合わせてウソのニュースを公開していた。「cnn.com.de」など、大手メディアに似せたサイトを作るのだという。個人で情報を発信するのが当たり前になり、宣伝と気づかせないように宣伝する「ステルス・マーケティング」が流行する時代になったが、ネットを離れれば商業社会の枠組みは変わらず、「カネを稼ぐ」必要がある。そこに不正の余地がある。「ニセモノ」が公然と出回る今はまだ過渡期なのか。過渡期だからこそ、悪質なものには怒りの声を上げていく必要がないか。(2017年4月29日〜5月3日、10100字)

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