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朝日新聞社

鳥取鉄道物語 「瑞風」を待ち受けるおもてなしの鉄路

初出:朝日新聞2017年1月1〜12日
WEB新書発売:2017年6月8日
朝日新聞

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 国鉄が分割・民営化され、JRが発足してから2017年で30周年。鳥取県内の鉄道は沿線の町や人とともに移り変わってきたが、鉄道や鉄道に関連する事業に携わる人々は、昔と変わらぬおもてなしの心で旅人を待ち受ける。2017年6月、豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風」・山陰コース開設を機に、そんな暖かさを持った人々の姿を追った。

◇第1章 心を込めて、おもてなし/県内2駅、歓迎準備着々と
◇第2章 走行音記録する「音鉄」/年120日、臨場感求め取材
◇第3章 JR社員のジャズバンド/葛藤越え、地域に音楽を
◇第4章 よみがえる無人駅/社交場、名誉駅長守る
◇第5章 開業時の「目玉」女性車掌/共に苦労越え後輩に道
◇第6章 鉄道サークルがイベント/体験型広げ魅力伝える
◇第7章 スピード時代の駅弁/廃れない地元の味守る
◇第8章 倉吉線廃線跡は今/姿変え「再生」、街も続け
◇第9章 「出雲」と歩んだ半生/喜怒哀楽、廃止後も残光
◇第10章 三十数年、車掌ひと筋/田舎の温かさ、瑞風でも


第1章 心を込めて、おもてなし/県内2駅、歓迎準備着々と

 ゴウゴウという冬の日本海の波音がプラットホームまで届く。JR山陰線の県内東端に位置する東浜駅(岩美町陸上〈くがみ〉)。目と鼻の先に砂浜が広がる。この無人駅に6月から、豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)」が停車する。

 「ほんによいとこ東浜〜、ソレ、ほんによ〜いとこ東浜〜♪」
 12月初旬、東浜駅から西へ約200メートルの公民館。民謡調の歌に合わせ、周辺住民ら約20人が地元の東浜音頭を踊っていた。長く踊る人がいなかったが、瑞風の運行と東浜駅への停車を聞き、復活させた。伝統の傘踊りとともに、乗客に披露する。東浜らしい、素朴なおもてなしをしたい、と思ったという。
 踊り手の一人、浜口丈夫(ますお)さん(67)=同町大羽尾=は「乗客を、笑顔で心を込めてお迎えしたい。それが1番ですけえ」。
 踊りを指導するのは東浜駅周辺を含む町内東地区の自治会役員らだ。今月上旬にも株式会社「東浜」を立ち上げ、住民と連携を取りながら乗客をもてなす事業を本格的に始める。社長に就任予定の中島睦郎さん(70)=同町陸上=は「東浜、そして岩美の名前を全国に発信したい」と話す。


 東浜駅周辺は昭和30年代、臨海学校の子どもたちや家族連れらがよく訪れ、民宿が60軒ほど連なっていたというが、今や6軒。株式会社「東浜」はにぎわいを取り戻そうと、地域の魅力を伝え、再訪してもらえる仕掛け作りに取り組む。
 目玉に位置づけるのが東浜駅近くの旧保育所を改修して今春オープンさせるレストラン「アルマーレ」。店内から日本海が一望できる。県内を中心にカフェなどを展開する「Trees」(鳥取市、山根大樹社長)に料理の監修を依頼し、シェフやメニューの選定を急いでいる。最大の売りは地元食材を使ったイタリア料理。瑞風の乗客に目の前の海岸で地引き網漁を体験してもらい、それで捕れた魚も料理に使うことにしている。
 寺谷洋子さん(57)=同町陸上=は、長年切り盛りしてきた民宿の経営から退き、アルマーレの現場を取り仕切る。「スマートじゃないかもしれないけれど、地域のつながりが感じられる温かいおもてなしがしたい」。いつも波の音が聞こえ、自然の美しさや厳しさを身近に感じられる東浜駅周辺の魅力を、日本中の人に伝えたいと思っている・・・

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鳥取鉄道物語 「瑞風」を待ち受けるおもてなしの鉄路
216円(税込)

国鉄が分割・民営化され、JRが発足してから2017年で30周年。鳥取県内の鉄道は沿線の町や人とともに移り変わってきたが、鉄道や鉄道に関連する事業に携わる人々は、昔と変わらぬおもてなしの心で旅人を待ち受ける。2017年6月、豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風」・山陰コース開設を機に、そんな暖かさを持った人々の姿を追った。(2017年1月1〜12日、12500字)

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