政治・国際
朝日新聞社

習近平の側近たち 現代中国政治の核心を読み解く

初出:朝日新聞2017年4月13日〜5月7日
WEB新書発売:2017年6月8日
朝日新聞

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 ヤシの木が風になびくフロリダ州の邸宅。中国の国家主席、習近平の右二つ隣の席には、色黒で目つきの鋭い男の姿があった。習の懐刀、栗戦書であった――。習近平体制で、習の地方勤務時代の幹部が次々と重用され、次世代の指導者にも、県書記や県書記に相当する役職の出身者が次々と抜擢されている。2017年6月、米大統領トランプ氏の別荘で行われた会談に随行した栗戦書も、習が県書記だった同時期、近隣の県で書記を務めていた。習の側近たちとはどんな人々なのか。県書記経験者をひきたてる習の政治志向、理念とは何か。側近たちの横顔から、習近平時代の中国政治の核心を読み解きます。

◇第1章 懐刀は地方の同志
◇第2章 「工事やめろ」 前任書記を否定
◇第3章 冤罪事件ショック、司法改革へ
◇第4章 幹部会議、親交結んだ若手2人
◇第5章 部下の心つかみ、組織まとめる
◇第6章 退役軍人が語る「義理堅さ」
◇第7章 やり手にも出世遅れた過去
◇第8章 上司と不仲 その結果、昇進
◇第9章 抜擢されず…影のブレーンに?
◇第10章 32年前の訪米人脈、陰に陽に
◇第11章 出世の条件は県書記の経験
◇第12章 全人代前、貧農の元へ
◇第13章 習氏の連載コラム、生みの親
◇第14章 党のしきたり守りつつ新機軸
◇第15章 慎重かつ大胆、式典でお膳立て
◇第16章 記者への対応、手厚さと警戒
◇第17章 特別な地、元部下に反腐敗託す
◇第18章 上海経済を掌握せよ
◇第19章 目ざとい、SNSの使い手
◇第20章 地方幹部の秘書経験が転機に
◇第21章 反対意見を抑え壁を撤去
◇第22章 習政権第2幕、支持つなぐ使命
◇番外編 ポスト習、くすぶる2人


第1章 懐刀は地方の同志

◎習氏の秘書役、同時期に近県トップ
 ヤシの木が風になびく米フロリダ州パームビーチ。7日午前、米大統領トランプの別荘「マール・ア・ラーゴ」の、金の装飾がちりばめられた白い柱が並ぶ豪華な部屋で、米中の首脳や幹部が向かい合っていた。
 中国の国家主席、習近平(シーチンピン)(63)の右二つ隣には、色黒で目つきの鋭い男が座った。
 習の懐刀、栗戦書(リーチャンシュー)(66)。肩書は中国共産党中央弁公庁主任。日本でいう官房長官と党幹事長をあわせたような要職である。
 首脳会談ではトランプの斜め向かいに陣取った。だが、外遊などで栗の発言が表に出ることはない。習の秘書役として常に付き添う陰の実力者。党の機密文書や通信の取り扱い、国家指導者の身辺の安全管理などを取り仕切る政権のキーパーソンだ。
 栗をこの地位に大抜擢(ばってき)したのは、習である。
 1980年代半ば、栗が農村地帯にある河北省無極県のトップ、書記を務めていたとき、習はすぐ近隣の正定県で書記を務めていた。このとき以来の深い関係だと言われる。
 ともに若き30代の県書記はいかに知り合い、関係を深めていったのか。
 中国指導部の中枢に立つ2人の原点とも言える無極県を訪ねてみた。
 農業が中心の人口約50万人の小さな県。日本の小さな市や町のイメージだ。どんよりとした曇り空の下、黄砂で薄汚れた人家の周囲に畑が広がっている。
 栗はどんな県書記だったのか、と住民に尋ねると、意外な答えが返ってきた。
 「80年代の書記と言えば、劉日だろう。中央に行ったヤツ? 名前は何だっけ」。30代の男性運転手はそう言った。
 劉日(68)とは栗の後任の無極県の書記。住民たちの反応は、みな同じようなものだった。住民の記憶にあるのは栗ではなく、劉だったのだ。
 劉日とはどんな人物なのか。その経歴を見てみる。
 高校教師などを経て、85年に無極県の書記。その後、学者に転じて引退。役人としては出世できなかった人物のようだ。
 なぜ首都北京でほとんど知られていない元幹部が、党高官の栗よりも有名なのか。劉の経歴を見直しながら、はっと気づいた。
 劉は、無極県の書記になる前に正定県の副書記を務めている。そのときの正定県の書記は習だ。つまり劉は習の直属の部下から、栗の後任になる形で習と栗をつなげている。
 今や中国の頂点に立った習近平。その習によって大抜擢されながら、地元で印象の薄い栗戦書。一方で、習の直属の部下であり、名書記と言われながら、出世しなかった劉日……。
 80年代、この河北省の農村で3人の若手指導者の間にいったい何があったのか。その答えを追った・・・

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習近平の側近たち 現代中国政治の核心を読み解く
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ヤシの木が風になびくフロリダ州の邸宅。中国の国家主席、習近平の右二つ隣の席には、色黒で目つきの鋭い男の姿があった。習の懐刀、栗戦書であった――。習近平体制で、習の地方勤務時代の幹部が次々と重用され、次世代の指導者にも、県書記や県書記に相当する役職の出身者が次々と抜擢されている。2017年6月、米大統領トランプ氏の別荘で行われた会談に随行した栗戦書も、習が県書記だった同時期、近隣の県で書記を務めていた。習の側近たちとはどんな人々なのか。県書記経験者をひきたてる習の政治志向、理念とは何か。側近たちの横顔から、習近平時代の中国政治の核心を読み解きます。(2017年4月13日〜5月7日、24500字)

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