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朝日新聞社

貧困化する大学 研究費減少で迫られる資金獲得作戦

初出:朝日新聞2017年4月1日〜3日
WEB新書発売:2017年7月20日
朝日新聞

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「大学は本当に貧困になっている」。ノーベル医学生理学賞を受けた大隅良典・東京工業大栄誉教授は憂慮する。国から国立大学に支給され、自由に研究に分配できる運営費交付金は、国立大が法人化した2004年度から16年度までに、1割強にあたる約1470億円も減少。私立大に対する補助も15年度、44年ぶりに運営費全体の1割を切った。こうした苦境を受けて、各大学は、資金獲得のためにさまざまな努力をしている――。「研究費」をめぐる現状を神奈川県から報告します。

◇第1章 基礎研究、大隅教授の憂い/細る交付金「社会が支えて」
◇第2章 自作のゆるキャラで稼ぐ/クラウドファンディングも活用
◇第3章 軍事転用、チェック必要 防衛省の助成金18倍


第1章 基礎研究、大隅教授の憂い/細る交付金「社会が支えて」

 昨年のノーベル医学生理学賞を受けた大隅良典・東京工業大栄誉教授(72)が、長期的な基礎研究を社会が支える仕組み作りについて、積極的な発言を続けている。背景にあるのは、短期的な成果を求める研究にばかりお金が流れ、「このままでは日本の基礎科学が立ちゆかなくなる」という危機感だ。大磯町に暮らす大隅さんに、横浜市緑区のすずかけ台キャンパスで思いを聞いた。
 「役に立たない研究をしよう」。ここ10年、大隅さんがそう話すと、「それでいいんですか」と首をかしげる学生が増えたという。細胞内の新陳代謝の仕組みを探るオートファジーの研究でノーベル賞を受けた大隅さん自身、研究の成果が役に立つかは意識してこなかった。「科学は金もうけのためのものではなく、社会を支えるもの。すぐに役に立つことばかり求めていたら基礎科学はできない」と話す。

◎1割強も減少
 国から国立大学に支給され、自由に研究に分配できる運営費交付金は、国立大が法人化した2004年度から16年度までに、1割強にあたる約1470億円も減少。私立大に対する補助も15年度、44年ぶりに運営費全体の1割を切った。一方、研究者から研究計画を募り、審査を経て交付する文部科学省の「競争的資金」は増加傾向。16年度は約3445億円で、04年度から約920億円増えた。国の財政が厳しい中、文科省が戦略的に予算を振り分ける傾向が強まっている。
 「運営費交付金を毎年1%ずつ削られて、大学は本当に貧困になっている」。競争的資金を獲得するために研究者が目先の成果を得やすい研究に流れ、長期的な研究が難しくなると大隅さんは憂慮する。
 資金を確保するために企業との共同研究を求められることも多い。大学と企業の役割があいまいになり、大学が空洞化してしまうことも懸念する・・・

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貧困化する大学 研究費減少で迫られる資金獲得作戦
216円(税込)

「大学は本当に貧困になっている」。ノーベル医学生理学賞を受けた大隅良典・東京工業大栄誉教授は憂慮する。国から国立大学に支給され、自由に研究に分配できる運営費交付金は、国立大が法人化した2004年度から16年度までに、1割強にあたる約1470億円も減少。私立大に対する補助も15年度、44年ぶりに運営費全体の1割を切った。こうした苦境を受けて、各大学は、資金獲得のためにさまざまな努力をしている――。「研究費」をめぐる現状を神奈川県から報告します。(2017年4月1日〜3日、5900字)

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