政治・国際
朝日新聞社

慰安婦問題と韓国の国民情緒 文在寅政権で今後どうなるのか

初出:朝日新聞2017年6月28日、29日、7月8日
WEB新書発売:2017年7月27日
朝日新聞

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 慰安婦問題の日韓合意に対する韓国内の反発がやまない。日本政府にとってみれば、合意は韓国で政権が交代しても再び外交問題にしないと確約させる意味もあった。しかし、文在寅(ムンジェイン)大統領は前政権での合意を「国民の大多数が情緒的に受け入れていない」とする。合意の履行を難しくしている「国民情緒」とは何か。2017年7月7日、安倍晋三首相との間で行われた初の日韓首脳会談での議論も加え、慰安婦問題の置かれた現状を報告する。

◇第1章 慰安婦合意、反発の背景
◇第2章 合意推進、財団に葛藤
◇第3章 日韓、相互訪問再開へ
◇第4章 日韓「未来志向」を演出


第1章 慰安婦合意、反発の背景

■元慰安婦「謝罪がない」 手紙「毛頭ない」に衝撃
 「私は(事前に)合意を聞いたこともない。私はハンコを押したこともない」。元慰安婦の李容洙(イヨンス)さん(88)は2017年5月31日、ソウルの日本大使館近くで毎週水曜に開かれる集会で、日韓合意についてこう批判した。参加者は慰安婦を象徴する少女像を囲んで集う。
 韓国の元慰安婦の一部は自分の名前を公表し、解決を求めて活動している。
 元慰安婦の支援団体関係者や韓国メディア関係者によると、多くの元慰安婦が名前を明らかにしないなかで、李さんらの発言は「勇気がある」と受け止められてきた。それだけに発言の影響力は大きく、それに異を唱えるような論評はしにくい雰囲気があるという。
 一方で、合意に基づいて韓国政府が設立した財団による現金支給事業について70%を超える元慰安婦が受け入れる意思を表明している。ただ、韓国政府高官は、当事者である元慰安婦が事前に説明を聞いておらず、同意もできないと批判したことが、韓国内での日韓合意をめぐる世論につながったとの見方を示した。
 李さんは集会で「お金ではない。謝罪を受けなければならない」とも訴えた。合意には安倍晋三首相の「おわびと反省の気持ち」が盛り込まれているものの、日本政府は元慰安婦に直接謝罪していないとの批判が根強い。
 2016年1月の衆院予算委員会。安倍氏は野党議員から合意に盛り込まれた首相の「おわびと反省」を自らの言葉で言うべきだと求められた。これに対し、安倍氏は「問われるたびに答弁すると最終的に終了したことにはならない」と拒んだ。
 直接謝罪がないとの批判に対応するため、韓国政府や財団では安倍氏から元慰安婦に「おわびの手紙」を送ってもらう案が浮上した。かつて日本政府が主導して設立した「アジア女性基金」の事業で、首相の「おわびの手紙」を送った実績があった。
 しかし、安倍氏は2016年10月の衆院予算委員会で「我々は毛頭考えていない」と一蹴。激しい拒否反応に韓国外交省幹部は「予想外で衝撃的だった」と振り返る。
 その後、「毛頭考えていない」という発言は慰安婦問題の解決を求める集会などで日本政府を批判する材料になった。結果的に安倍氏の発言は「おわびに誠意がない象徴と受け止められた」(韓国外交省関係者)・・・

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慰安婦問題と韓国の国民情緒 文在寅政権で今後どうなるのか
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慰安婦問題の日韓合意に対する韓国内の反発がやまない。日本政府にとってみれば、合意は韓国で政権が交代しても再び外交問題にしないと確約させる意味もあった。しかし、文在寅(ムンジェイン)大統領は前政権での合意を「国民の大多数が情緒的に受け入れていない」とする。合意の履行を難しくしている「国民情緒」とは何か。2017年7月7日、安倍晋三首相との間で行われた初の日韓首脳会談での議論も加え、慰安婦問題の置かれた現状を報告する。(2017年6月28日、29日、7月8日、6000字)

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