経済・雇用
朝日新聞社

トヨタ自動車が消滅する日 大きくなりすぎた?ベンチャー企業

初出:朝日新聞2017年7月19日〜21日
WEB新書発売:2017年8月3日
朝日新聞

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 「新しいライバル」。トヨタ自動車の豊田章男社長がそう呼ぶのは、米国の電気自動車ベンチャー・テスラだ。その姿が草創期のトヨタに重なるのかも知れない。1937年、豊田自動織機の社内ベンチャーが独立したのが、トヨタ自動車の始まりだ。繊維から自動車へのシフトは、豊田喜一郎氏(章男氏の祖父)らの英断とされるが、80年後のいま、同社は再び大きな岐路に立つ。化石燃料の将来性は暗く、カーシェアリングなど共有経済の兆しも見える。だが、思い切って既存の勢力と袂を分かって新しい道を進むには、同社は巨大企業になりすぎたのかも知れない。

◇第1章 「生き抜くため」、何でも
◇第2章 製造業から移動サービス業へ
◇第3章 縮む市場、薄れる系列販売


第1章 「生き抜くため」、何でも

 トヨタ自動車の社長、豊田章男の言葉に、周りの役員は息をのんだ。
 「明日を生き抜くため、M&Aも含め、あらゆる選択肢を検討する」
 6月の株主総会。「米テスラや中国企業、グーグルなどの異業種も参入してきた。今まさに、80年前と同じことが起きているのかも知れない」とも述べた。
 1937年の8月28日、祖父の喜一郎らが豊田自動織機の社内ベンチャー、自動車部を独立させた。日中戦争が始まった年だ。
 これに先立って、近代繊維産業を引っ張った英プラット社に、織機の特許を売却。米ゼネラル・モーターズ(GM)車の分解から手を着けた。繊維産業の衰えの兆しとモータリゼーションを欧米で見た喜一郎は、国産車の開発を急いだ。
 「織機や紡績が喜一郎さんの発明道楽の犠牲になってもええというのか」。社長を後年務めることになる石田退三はそう反発した。
 時は流れ、80年代。プラット社は姿を消し、トヨタは自動車の米国生産に踏み切った。いま、世界約30カ国でつくる車は年1千万台を超える。
 歴史を意識する章男は年8万台のテスラを「新しいライバル」と言う。トップのイーロン・マスクはネット決済で稼ぎ、ロケットも手掛ける。創業は2003年。つくるクルマは電気自動車(EV)だけだ。
 「石油に依存する車をなくす。自動車産業を変える」。直線的な姿は草創期のトヨタと重なる・・・

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トヨタ自動車が消滅する日 大きくなりすぎた?ベンチャー企業
216円(税込)

「新しいライバル」。トヨタ自動車の豊田章男社長がそう呼ぶのは、米国の電気自動車ベンチャー・テスラだ。その姿が草創期のトヨタに重なるのかも知れない。1937年、豊田自動織機の社内ベンチャーが独立したのが、トヨタ自動車の始まりだ。繊維から自動車へのシフトは、豊田喜一郎氏(章男氏の祖父)らの英断とされるが、80年後のいま、同社は再び大きな岐路に立つ。化石燃料の将来性は暗く、カーシェアリングなど共有経済の兆しも見える。だが、思い切って既存の勢力と袂を分かって新しい道を進むには、同社は巨大企業になりすぎたのかも知れない。(2017年7月19日〜21日、4500字)

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