医療・健康
朝日新聞社

食べるってすごい 低酸素脳症からの回復 患者を生きる

初出:朝日新聞2017年6月19日〜23日
WEB新書発売:2017年8月10日
朝日新聞

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「ご主人が救急車で運ばれました。心肺停止の状態です」。通勤途中、心筋梗塞で倒れた夫は、蘇生はしたものの、蘇生後脳症(低酸素脳症)となった。目を開けるが、呼びかけには応じず、手足もまひ。だが、リハビリを続けるうちに、口からも、ものを食べられるようになった。「食べるって、すごい」。支える家族の姿を伝えます。

◇第1章 出勤中倒れ低酸素脳症に
◇第2章 「食べるって、すごい」
◇第3章 むせる姿、誤嚥の不安
◇第4章 気負わず「楽しむ食事」
◇第5章 情報編 会話や歌もリハビリに


第1章 出勤中倒れ低酸素脳症に

 あの日は家のごみを出す木曜日の朝だった。東京都の白川千津子(しらかわちづこ)さん(54)は2014年10月、出勤する夫の秀薫(ひでしげ)さん(62)にごみ袋を手渡し「行ってらっしゃい」と見送った。「行ってきます」。それが、夫とかわす最後の言葉になるとは思いもしなかった。
 千津子さんも仕事に出ようとすると、家の電話が鳴った。近くの警察署からだった。
 「ご主人が救急車で運ばれました。心肺停止の状態です」
 警察官によると、近くのバス停へ向かう歩道でうずくまっているところを、通りかかった人が119番通報したという。
 受話器から聞こえる言葉の意味がよく理解できなかった。搬送先の総合病院へ向かい、救命救急センターで名前を告げると、出てきた医師が早口で説明した。
 「急性心筋梗塞(こうそく)です。蘇生はしましたが、心臓が45分ほど止まって脳に酸素がいかない時間が長く続き、脳死の可能性があります。覚悟してください。すぐに心臓にステントを入れる手術をしますので、サインしてください」
 手術の同意書にペンを走らせた。「何でも書くから、早く」
 秀薫さんに会えたのは夕方になってからだった。長女(29)と白衣を着て、集中治療室(ICU)に入った。「ピッ、ピッ」と音がする機械の間に夫が横たわっていた。「もう、何やってんの」。震える長女の声が横から聞こえた。
 呼吸で胸が動いていた。「パパ、生きてる」。ホッとする半面「脳死なの?」と怖くなった。
 心臓が止まって脳の酸素が足りなくなる蘇生後脳症(低酸素脳症)と診断された。医師から「自発呼吸を始めているので呼吸器ははずれると思います。ただ、どこまで回復するかは、何ともわかりません」と告げられた・・・

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食べるってすごい 低酸素脳症からの回復 患者を生きる
216円(税込)

「ご主人が救急車で運ばれました。心肺停止の状態です」。通勤途中、心筋梗塞で倒れた夫は、蘇生はしたものの、蘇生後脳症(低酸素脳症)となった。目を開けるが、呼びかけには応じず、手足もまひ。だが、リハビリを続けるうちに、口からも、ものを食べられるようになった。「食べるって、すごい」。支える家族の姿を伝えます。(2017年6月19日〜23日、4800字)

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