文化・芸能
朝日新聞社

イタリアと大阪の意外な関係 キリシタン絵画からハッピーアワーまで

初出:朝日新聞2017年5月14日〜6月18日
WEB新書発売:2017年8月24日
朝日新聞

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 大阪人とイタリア人は、どこか似ている。粉もん好き、語尾の方にアクセントをつけるしゃべり方、そしてフレンドリー。大阪でもっと「イタリア」を見つけようと、「旅」を始めた。謎のキリシタン絵画、家具、ピザ、バイオリン、そしてイタリア版「ハッピーアワー」ともいえる「アペリティーボ」。探してみると意外と色濃い大阪とイタリアの「縁」をたどります。

◇第1章 悲しみのマリア(1)/弾圧を生き抜いた「傷痕」
◇第2章 悲しみのマリア(2)/信者の祈り、息潜めた300年
◇第3章 ウインクチェア/ミラノ育ち、一流デザイン
◇第4章 ナポリピッツァ(1)/認定校に伝統継ぐ青い窯
◇第5章 ナポリピッツァ(2)/認定の腕、一分の隙もなし
◇第6章 バイオリン工房クレモナ/命吹き込み癒やしの音色
◇第7章 アペリティーボ/仕事を終え、広場に行こう


第1章 悲しみのマリア(1)/弾圧を生き抜いた「傷痕」

 大阪人とイタリア人は、どこか似ている。粉(こな)もん好き、語尾の方にアクセントをつけるしゃべり方、そしてフレンドリー。大阪でもっと「イタリア」を見つけようと、「旅」を始めた。まずは1枚の絵から――。

 その絵は、大阪・中津のマンションが立ち並ぶ一角で見つけた。白っぽいタイル壁に金文字で「南蛮文化館」と書いてある。中に入ると、奥の方に金色の額に入った一枚の人物画が飾ってあった。
 流線形の眉、紅を差した小さな唇。伏し目がちに首を傾けている。頭からかぶった金色のベールが、ワインレッドの服の胸元で巻かれている。「悲しみのマリア」と呼ばれる油彩画だ。
 この絵は、ほかの展示物と明らかに違って異彩を放っていた。イエスの死の悲しみに耐えるマリアの美しさもその理由だが、「傷痕」が生々し過ぎるのだ。縦に大きく2本、横に10本近く入った線が絵の価値を損ねていると思った。
 昨年11月に絵を見て、もう一度見たいと思ってもかなわなかった。南蛮文化館は、1年のうち11月と5月しか開かないからだ。
 「日本にはイタリア美術で見るべき作品はほとんどない。だが、この絵はイタリア第一級の絵画である」
 ある冊子で美術史家の解説を読み、4月半ば、その人を訪ねた。神戸大学大学院文学研究科教授の宮下規久朗(きくお)さん(53)。
 研究室で宮下さんは同じことを言った。「日本にイタリア美術の名品はない。日本人はフランス好きで、戦後はアメリカにかぶれた。イタリアがブームになるのは20世紀後半、旅行先として選ばれたからです・・・

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イタリアと大阪の意外な関係 キリシタン絵画からハッピーアワーまで
216円(税込)

大阪人とイタリア人は、どこか似ている。粉もん好き、語尾の方にアクセントをつけるしゃべり方、そしてフレンドリー。大阪でもっと「イタリア」を見つけようと、「旅」を始めた。謎のキリシタン絵画、家具、ピザ、バイオリン、そしてイタリア版「ハッピーアワー」ともいえる「アペリティーボ」。探してみると意外と色濃い大阪とイタリアの「縁」をたどります。(2017年5月14日〜6月18日、9300字)

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