医療・健康
朝日新聞社

認知症の夫が可愛い 最後は夫婦で2人

初出:朝日新聞2017年7月3日〜7日
WEB新書発売:2017年8月24日
朝日新聞

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 認知症。その言葉は知識として知っていても、本気で考えたことがある人は少ないだろう。考えたくないし、考えても仕方がない――。現役世代の気持ちはそんなところか。だが、誰でも認知症になりうる。考えても仕方がないのは事実かも知れないが、制度などについて最低限の知識は持っていた方がいい。京都市の70代の夫婦に焦点をあててみた。

◇第1章 不安や焦り、抑えられず
◇第2章 一人だけの介護に限界
◇第3章 1カ月後「帰りたくない」
◇第4章 喜寿へ、親身の訪問診療
◇第5章 情報編 特養シェア、家族支える


第1章 不安や焦り、抑えられず

 「夫が歩けなくなって、ようやくかわいいなって思えるようになりました」。京都市伏見区の大原秀雄(おおはらひでお)さん(76)の妻貞子(さだこ)さん(73)は、張り詰めた介護の日々を振り返った。秀雄さんは8年前「前頭側頭型認知症」と診断された。病気が原因で、貞子さんや物にあたるようになっていた。
 秀雄さんは2001年、市内の病院で営繕の仕事を60歳で定年退職。異変はその前後に表れた。退職の2年前、車を運転中に突然、高速道路で「ブレーキがきかない」と言い出した。だが、ブレーキに問題はなかった。02年に嘱託で元の職場に戻ったが、翌年に急に辞めてしまった。肺がんの疑いで検査入院した病院を抜け出したこともあった。
 06年ごろには、貞子さんが「バイクにガソリンを入れてくる」と言って15分ほどして家に戻ると、戸のガラスが割れて散乱し、電子レンジがひっくり返っていた。「どこに行っていたんや」。大柄な秀雄さんは妻を壁に押しつけて怒鳴った。貞子さんは「殺される」と思い、近所に駆け込んだ。
 秀雄さんは貞子さんの姿が見えないと不安になり、いら立った。風呂に入るときは秀雄さんにみかんを二つ渡し、食べている間にパッとすませた。いつでも外に逃げ出せるように普段着で寝た・・・

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認知症の夫が可愛い 最後は夫婦で2人
216円(税込)

認知症。その言葉は知識として知っていても、本気で考えたことがある人は少ないだろう。考えたくないし、考えても仕方がない――。現役世代の気持ちはそんなところか。だが、誰でも認知症になりうる。考えても仕方がないのは事実かも知れないが、制度などについて最低限の知識は持っていた方がいい。京都市の70代の夫婦に焦点をあててみた。(2017年7月3日〜7日、4800字)

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