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朝日新聞社

若者たちの田園回帰 「明日はない。あさってはある」

初出:朝日新聞2017年3月6日〜17日
WEB新書発売:2017年8月24日
朝日新聞

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 都市部から地方に移住する若者が増えている。バブル崩壊後の就職氷河期。「終身雇用」などという概念が消え去った時代の若者たちとも言えるが、一方で地球環境の問題や持続可能な発展について真剣に考え、社会に貢献したいと本気で思っている若者たちでもある。猛烈に働いて、豊かになる――。戦後の経済成長路線が頭打ちになったとしたら、日本の将来像は彼らの姿と重なってくるのではないか。

◇第1章 島根の「田舎」でなにが?
◇第2章 30代前半、そうだったのか!
◇第3章 海を渡った「半農半X」
◇第4章 欲しい人材、ハードル上げた
◇第5章 はじまりは「疎開」
◇第6章 チャレンジが人を呼び込む
◇第7章 ナリワイを集めて暮らす
◇第8章 「村消滅」なんてさせない
◇第9章 「移住女子」は、ぶれない
◇第10章 2人に1人が移住者の地区


第1章 島根の「田舎」でなにが?

 都会から地方に移住する若者が増えている。その現象に「田園回帰」と名付けたのは、山陰地方のひとりの研究者だった。
 島根県中山間地域研究センターの藤山浩(こう)(57)が「異変」に気づいたのは2006年のことだ。県内の自治体ごとの各世代人口について、05年国勢調査データと、その5年前のデータを比較していた藤山は首をひねった。
 日本海に浮かぶ隠岐諸島にある町や村で20代や30代の人口が増えていたのだ。松江市などの都市近郊ではなく、離島である知夫村(ちぶむら)や海士町(あまちょう)といった「田舎の中の田舎」の町村だった。
 これは、どういうことだろう。早速、島に渡った藤山が目にしたのは、首都圏や関西などの都会からIターンした若者たちだった。
 当時、過疎問題の研究者の間で祈るように言い交わす言葉があった。「中山間地域にあすはない。しかし、あさってはある」。今は顧みられない自然豊かな地域も遠い将来は再生する可能性はある。でも、10年、15年という短いスパンでは難しい。藤山もそう考えていた。だから一部の一時的な現象かも知れないと思っていたのだ。
 しかし、06年から2年をかけた「限界集落」の調査で中国山地に分け入って考えが変わる。美郷町(みさとちょう)、邑南町(おおなんちょう)といった山間部にも飛び火していたからだ。「都会から地方に向かう若者のうねりが確実に起きている。ゾクゾクしたのを覚えています」

 ところが講演で話しても誰も信じない。だが、10年代に入ると移住者は一段と増えた。人の出入りは転入から転出を差し引いた「社会増減」で分かる。その増減が08〜13年に1年だけでもプラスに転じた自治体が島根県内で8市町村に上った・・・

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若者たちの田園回帰 「明日はない。あさってはある」
216円(税込)

都市部から地方に移住する若者が増えている。バブル崩壊後の就職氷河期。「終身雇用」などという概念が消え去った時代の若者たちとも言えるが、一方で地球環境の問題や持続可能な発展について真剣に考え、社会に貢献したいと本気で思っている若者たちでもある。猛烈に働いて、豊かになる――。戦後の経済成長路線が頭打ちになったとしたら、日本の将来像は彼らの姿と重なってくるのではないか。(2017年3月6日〜17日、12200字)

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