文化・芸能
朝日新聞社

やっぱり気になる境界 芥川賞と直木賞・科学と疑似科学…

初出:朝日新聞2017年8月14日〜18日
WEB新書発売:2017年9月14日
朝日新聞

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 かつてノーベル文学賞を受賞した大江健三郎氏が「あいまいな日本の私」と題する記念講演をし、「あいまいな」という修飾が「日本」にかかるのか「私」にかかるのかあいまいだった。それは昔の話だが、境界線が微妙になっている一例として、芥川賞と直木賞がある。純文学の芥川賞、大衆文学・エンタメの直木賞ともいわれるが、両賞で候補になった作家も多く、境界はよく分からない。科学と疑似科学、名作とヒット作など、いろいろな「気になる境界」を探った。

◇第1章 何が「純文学」?進む液状化
◇第2章 誰もが知る曲、もう出ない?
◇第3章 科学とは、揺らぐ見極め
◇第4章 友達?恋人?曖昧さの魅惑
◇第5章 不朽の名作、その条件は


第1章 何が「純文学」?進む液状化

■芥川賞/直木賞 行ったり来たり多数
 文芸の世界を取材していると、しばしば耳にするのが「純文学」と「エンタメ」というジャンル分けだ。分かりやすいのが、芥川賞=純文学、直木賞=エンタメという図式。でも、この線引きってひょっとしてもう時代遅れ?
 第157回直木賞。候補の一人だった作家の宮内悠介さん(38)は、半年前の前回は芥川賞候補で、それ以前に2回、直木賞候補になっている。
 宮内さんは「(純文学は)神聖化してしまって自由に書けないこともあるが、エンタメは単純に楽しんでもらいたいという思いの方が強い」と明かす。では、純文学とエンタメの定義とは? 「それに答えられる作家さんはいらっしゃるのでしょうか」と笑う。
 両賞候補の行ったり来たりは何度もある。主催する日本文学振興会は、芥川賞は「新進作家による純文学の中・短編作品」から、直木賞は「新進・中堅作家によるエンターテインメント作品」から選ばれるとするが、その境目はあいまいだ。
 エンタメや大衆文学というとミステリーや時代小説が思い浮かぶが、ウェブサイト「直木賞のすべて」を運営する川口則弘さん(44)は「直木賞は一般に考えられている『大衆文学』とは違う。大衆よりも文学に重きを置く傾向がある」。
 直木賞では時に「人間が書けていない」「通俗にすぎる」といった理由で落選する一方、数回の芥川賞候補の後、直木賞を受けた作家も少なくない。「良く言えば幅が広く、悪く言えば何でもありなのが直木賞。中堅作家による純文学を候補にする懐の深さがある・・・

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やっぱり気になる境界 芥川賞と直木賞・科学と疑似科学…
108円(税込)
  • 著者板垣麻衣子、野波健祐、河村能宏、木村尚貴、高久潤、滝沢文那、野村杏実
  • 出版社朝日新聞社
  • 出版媒体朝日新聞

かつてノーベル文学賞を受賞した大江健三郎氏が「あいまいな日本の私」と題する記念講演をし、「あいまいな」という修飾が「日本」にかかるのか「私」にかかるのかあいまいだった。それは昔の話だが、境界線が微妙になっている一例として、芥川賞と直木賞がある。純文学の芥川賞、大衆文学・エンタメの直木賞ともいわれるが、両賞で候補になった作家も多く、境界はよく分からない。科学と疑似科学、名作とヒット作など、いろいろな「気になる境界」を探った。(2017年8月14日〜18日、8600字)

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