医療・健康
朝日新聞社

クレプトマニア 万引きがやめられない人々

初出:朝日新聞2017年8月25日〜9月1日
WEB新書発売:2017年9月21日
朝日新聞

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「頭では取ったらいかん、取ったらいかん、と思うけど、体が動く。頭と体が違う感じになって」――。衝動を抑えられずに万引きなどの窃盗を繰り返す「クレプトマニア」(窃盗症)と呼ばれる精神疾患がある。群馬県渋川市の赤城高原ホスピタルは、その治療の先駆的な病院として全国的に知られている。再犯は防げるのか。病院の取り組みなどから考える。

◇第1章 頭と違う行動に戸惑い 被告「自分でも分からない」
◇第2章 「空っぽの心、埋める」衝動 失意体験や家庭問題きっかけ
◇第3章 治療中、再犯繰り返す恐怖 「絶望的状況からも回復の光」
◇第4章 支える家族、苦悩と希望 「向き合うべきところが見えた」
◇第5章 「刑罰よりも治療必要」 刑務所に特化プログラムなく


第1章 頭と違う行動に戸惑い 被告「自分でも分からない」

 年の瀬の迫った2016年12月28日の昼下がり。伊勢崎市のスーパーに女性(82)は出かけた。おせち料理の食材や孫に送ってあげる干し柿を買うはずだった。
 店内で、もち米や味のりをかごに入れた。しかし、女性はレジには向かわず、ひと目のつかない場所でかごの商品を手提げ袋に入れ替えた。別のバッグやポケットには干し柿、三つ葉、小ネギ、かまぼこ、グレープフルーツを入れた。女性は12点、5263円分を精算せず、店外に出たところで私服警備員から呼び止められた。
 初めてではなかった。2011年の年末、ふるさとの九州で万引きで検挙された。翌年、「狭い村だから知れ渡る」と長男のいる群馬に来たが、ここでも畑の野菜を盗んだり、万引きをしたりして、罰金刑を2度受けた。
    ◇
 今年6月中旬、前橋地裁での初公判。女性は「頭では取ったらいかん、取ったらいかんと思うけど、体が動く。頭と体が違う感じになって」と話した。
 事件後、毎朝、「店に行かない。買い物をしない」と念じている。早く死にたいと思うが、それも家族に迷惑がかかると思いとどまる日が続いているという。
 8月24日、地裁は女性に懲役10カ月、執行猶予2年の判決を出した。
 女性は話す。「自分で頑張らんばいかんと思っても、なかなか行動が。万引きの人はなかなか治らんですよ」
    ◇
 6月中旬、前橋地裁の別の法廷。証言台に座った被告の女性(63)も、自分の行動を説明できず、何度も首をかしげていた。
 スーパーで練り物や牛丼のタレなど9点を万引きした罪に問われていた。被害額は1214円。万引きの前科があり、昨年7月に執行猶予付きの判決を受けた約9カ月後の再犯だった・・・

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クレプトマニア 万引きがやめられない人々
216円(税込)

「頭では取ったらいかん、取ったらいかん、と思うけど、体が動く。頭と体が違う感じになって」――。衝動を抑えられずに万引きなどの窃盗を繰り返す「クレプトマニア」(窃盗症)と呼ばれる精神疾患がある。群馬県渋川市の赤城高原ホスピタルは、その治療の先駆的な病院として全国的に知られている。再犯は防げるのか。病院の取り組みなどから考える。(2017年8月25日〜9月1日、6300字)

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