医療・健康
朝日新聞社

認知症の母を水死させた 「あの時、こうしていれば」守れたはずの命

初出:朝日新聞2017年8月22〜24日
WEB新書発売:2017年9月28日
朝日新聞

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 認知症の母親の顔を浴槽の水につけて水死させた姉は、手首から血を流した状態で浴室の洗い場で倒れていた。近くには包丁があった――。どんどん進行する認知症に、周囲の支えが追いつかず、望まない形で終焉を迎えるケースが増えています。母の、父の、家族、隣人の命を、どうすれば助けられたのか。3つのケースから考えます。

◇第1章 助け求めていれば、母は/1人抱え込み、絶望
◇第2章 異変10年、刑務所で診断/かつて仕事・家族…出所9日前他界
◇第3章 帽子に名前、見守ってたのに


第1章 助け求めていれば、母は/1人抱え込み、絶望

■誰にも相談できず、自分の手で死なせてしまった
 《致命的だったのは、あれほどサポートしてくれる人たちが近くにいたのに、独りよがりの思い込みで行動を起こしてしまったことだと思います》
 2016年4月18日、小千谷市で同居していた認知症の母親(当時86)を殺害した疑いで、県警に逮捕された。その後、殺人罪で懲役9年の判決を受けた姉(58)と、刑務所で過ごす姉のもとへ面会に通う妹(48)。姉妹に当時や今の心境をつづった手紙を寄せてもらった。
 《事件から1年以上が経ち、焦り、混乱が消えました。自分が善悪の一線を越える行動をし、自殺未遂をするとは、思ってもみませんでした》
    ◇
 病に倒れた父が亡くなったのは、16年4月6日のことだった。県外で別々に暮らしていた姉妹は実家に戻った。3人暮らしを始めたが、母の認知症は急激に進行した。朝は5時前に起きてすぐに料理を作り始める。火をつけたまま台所を離れて鍋を焦がし、スイッチを間違えてグリルを空焼きした。ゴミの分別もできなくなった。注意をすると、母は怒鳴り返した。
 《母が起きている間は、見張るような形になってしまい、それが母の感情を逆なでして怒りっぽくさせてしまったと思います》
 母は施設に入ることを嫌がった。妹と相談しながら訪問介護のあてを探したが、「一日中つきっきりでないとだめだ」という思いは頭から離れなかった。
 《母を一人の人間として見れなくなっていたような気がします。焦り、精神的不安、睡眠不足などが悪循環となり、どんどん自分を追い込んでいったのだと思います》
 妹《姉は、仕事を辞めなくてはいけなくなり、長女としての責任もあり、毎日眠れない日々だったと思います。毎日反省ばかりしていました》
 あの日、姉は母親の顔を浴槽の水につけて水死させ、殺人容疑で逮捕された。姉は手首から血を流した状態で浴室の洗い場で倒れていた。近くには包丁があった・・・

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認知症の母を水死させた 「あの時、こうしていれば」守れたはずの命
216円(税込)

認知症の母親の顔を浴槽の水につけて水死させた姉は、手首から血を流した状態で浴室の洗い場で倒れていた。近くには包丁があった――。どんどん進行する認知症に、周囲の支えが追いつかず、望まない形で終焉を迎えるケースが増えています。母の、父の、家族、隣人の命を、どうすれば助けられたのか。3つのケースから考えます。(2017年8月22〜24日、5000字)

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