文化・芸能
朝日新聞社

教科書の教えてくれない江戸 明治維新150周年を前に

初出:朝日新聞2017年8月28日〜9月7日
WEB新書発売:2017年10月12日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

徳川家康が拠点に選ぶ前、すなわち中世の江戸は、小さな漁村に過ぎなかったという説がかつて有力だった。しかし、その後の研究で、江戸開府以降の繁栄は、中世にすでに準備されていたという見方が広がっている。2018年の明治維新150周年を前に、誰もが知っていると思いこんでいるが、その実意外とよくわかっていないところも多い「江戸」のまちの記憶をたどってみた。【紹介する「記憶」】中世の江戸/丸の内/玉川上水/六義園/参勤交代/墓/お台場/大名屋敷

◇第1章 教科書は教えてくれない
◇第2章 海の記憶、丸の内の地下に
◇第3章 井戸で鮎は汲めたのか
◇第4章 晩年の視線が気になる
◇第5章 大名の見え「畳1枚でも前に」
◇第6章 無縁化する墓、いつの時代も
◇第7章 会津藩士の魂に導かれ
◇第8章 使える古地図をつくる


第1章 教科書は教えてくれない

 ふと思ったのだが、徳川家康がやってくる前の江戸ってどんな所だったのだろう。
 高校の日本史の教科書を何冊か読んでみたけれど、それらしい記述は見当たらない。最初の江戸城を築いたと習った太田道灌(おおたどうかん)の名前も出てこない。江戸時代より前の東京に関しては「弥生土器の名称の由来」と「大森貝塚」くらいしか載っていないのだ。
 東京・両国の江戸東京博物館に行ってみた。1993年のオープン以来、毎年100万人を超す人が訪れている。ここの常設展示は、まず復元された日本橋を渡って、橋の周辺に広がる寛永期(1624〜44年)の町並みの模型に接する仕掛けになっている。
 「これでは、ある日突然、江戸に都市が生まれたことになる」。開館の5年ほど前、岡野友彦さん(56)は計画段階だった構成に異を唱えたことを、著書「家康はなぜ江戸を選んだか」に記している。
 大学院を終え、資料収集室の学芸員になったばかり。今から思えば「若気の至り」だが、東京都が初めて手がける本格的な歴史博物館なのに、江戸時代から始まる近世と近代史しか扱わないことに違和感をもっていた。
 なぜ家康は江戸に開府したのか。それが分かる展示を「日本橋」の前に設けるべきではないか。居並ぶ江戸学の大家に訴えたが、思いは通じなかった。岡野さん自身、その答えを持ち合わせていなかった・・・

購入する

この記事の続きは、WEB新書でお読みいただけます。

教科書の教えてくれない江戸 明治維新150周年を前に
108円(税込)

徳川家康が拠点に選ぶ前、すなわち中世の江戸は、小さな漁村に過ぎなかったという説がかつて有力だった。しかし、その後の研究で、江戸開府以降の繁栄は、中世にすでに準備されていたという見方が広がっている。2018年の明治維新150周年を前に、誰もが知っていると思いこんでいるが、その実意外とよくわかっていないところも多い「江戸」のまちの記憶をたどってみた。【紹介する「記憶」】中世の江戸/丸の内/玉川上水/六義園/参勤交代/墓/お台場/大名屋敷(2017年8月28日〜9月7日、10300字)

    スマートフォン、タブレットでも読めます。

    Facebookでのコメント

    このページのトップに戻る