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朝日新聞社

地方議会が消える?町村総会になる? 高知・大川村ルポ

初出:朝日新聞2017年9月5日〜9月9日
WEB新書発売:2017年10月19日
朝日新聞

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 人口約400人の高知県大川村が、村議会に代わって一般の住民で議論・意思決定する「町村総会」の設置を研究している。もともと地方自治法に定められた制度だが、少子高齢化・地方の過疎化が進んで現実味を帯びてきた。課題も多い。議員のなり手さえいないのに、山の中などに点在する集落から人が集まって来るのか。行政をチェックする能力があるのか。一方で、地方議員のなり手がいない原因も浮き彫りになっている。少額の報酬では専業は難しいが、議員になるような人は名誉職の感覚で多くの役職に就いていて、兼職兼業規制に引っかかりやすい。大川村から現状をルポする。

◇第1章 警鐘「終わりの始まり」
◇第2章 自治呼び覚ます「劇薬」
◇第3章 兼職兼業制限、足かせに
◇第4章 「村のため」育つ予備軍
◇第5章 議会の行方、住民の手に


第1章 警鐘「終わりの始まり」

 過疎が極まって議員のなり手がいなくなり村議会が維持できなくなる。そんな最悪の事態も想定して、議会に代わって全有権者で構成する「町村総会」の設置を検討してはどうか――。
 人口約400人。離島を除いて全国最少の大川村は3カ月余り、その是非をめぐって揺れつづけた。議論に火を付けたのは議長の朝倉慧(あきら)(77)だった。
 5月中旬、村議会(定数6)の議会運営委員会(正副議長を除く4人で構成)に出した「議会組織の在り方について」と題した諮問書にはこんな質問が並ぶ。
 困難を乗り越え議会が構成できるか▽議会に関する周知の手段は▽総会設置の検討が必要か――。
 背中を押したのは強い危機感だ。過去5回の村議選をなぞると、定数削減を繰り返しても無投票から抜け出せない現状が浮かぶ。1999年に10だった定数を2003年に8、07年には6まで減らしたが、前回を含め3回が無投票だった。
 「次回はさらに深刻になる」と朝倉は言う。議員の高齢化が理由だ。現職6人の平均年齢は71歳。うち朝倉も含めて3人が77〜79歳。その3人はいずれも今期限りで引退の意向だ。残りの3人が立候補するとしても、選挙になるには新たに少なくとも4人、無投票でも3人の立候補が必要になる。それより少なければ再選挙だ。
 朝倉には「終わりの始まり」に思えてならない。議会すら維持できなくなれば、なしくずし的に村の存立も危うくなる。ここで議員や村、なにより村民が一丸となって踏ん張るためにアラームを発し、もしものために町村総会を研究しておく。それが諮問の狙いだった。
 標高1200メートル級の険しい山々に囲まれた愛媛との県境の村にはスーパーマーケットはもとより一軒のコンビニや喫茶店もない。生鮮食料品も車を20〜30分走らせた隣町で買うしかない。
 1960年に4114人を数えた人口は現在約400人。都市部の学校なら1学年の人数だ。そんな小規模な村はなくなっても仕方がないのではないか。8月上旬に村を訪ねるまで私は正直、そう考えていた・・・

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地方議会が消える?町村総会になる? 高知・大川村ルポ
216円(税込)

人口約400人の高知県大川村が、村議会に代わって一般の住民で議論・意思決定する「町村総会」の設置を研究している。もともと地方自治法に定められた制度だが、少子高齢化・地方の過疎化が進んで現実味を帯びてきた。課題も多い。議員のなり手さえいないのに、山の中などに点在する集落から人が集まって来るのか。行政をチェックする能力があるのか。一方で、地方議員のなり手がいない原因も浮き彫りになっている。少額の報酬では専業は難しいが、議員になるような人は名誉職の感覚で多くの役職に就いていて、兼職兼業規制に引っかかりやすい。大川村から現状をルポする。(2017年9月5日〜9月9日、6200字)

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