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朝日新聞社

負かした力士に手をさしのべなかった北の湖 「屈辱だよ」

初出:朝日新聞2017年9月12日〜9月25日
WEB新書発売:2017年10月19日
朝日新聞

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 大相撲で「憎らしいほど強い」とまで言われた元横綱北の湖(前理事長・故人)。負けた力士に手を差しのべないことでも知られた。「屈辱だよ。負けて手を借りたい力士なんていない」。その理由を本人は後年、こう話した。大相撲をめぐるさまざまな話を紹介する「角界余話」。今回は北の湖のほか、体重288キロを記録したロシア出身の大露羅(おおろら)、絶品と言われる国技館の枝豆、力士の日焼け対策などいろいろな話題を取り上げる。

◇第1章 悩み多き歴代最重量力士
◇第2章 涙目で見つめた師匠の姿
◇第3章 大横綱は寂しがり屋
◇第4章 秋場所感じる絶品枝豆
◇第5章 ゴルフ焼けにご用心
◇第6章 男女ノ川の破天荒人生
◇第7章 「下足番」説、独り歩き
◇第8章 戦争いつ終わる、陸軍大臣に物申す
◇第9章 「呼び出し」カンペで完璧
◇第10章 しこ名に「川」、消えた理由は
◇第11章 春日野部屋、質実の伝統
◇第12章 肩揺する癖、きっかけの一番
◇第13章 「肩に力が入ってるよ」


第1章 悩み多き歴代最重量力士

 大相撲秋場所2日目、午前11時。まだ序二段の取組だというのに、桟敷がわいた。
 お目当ては、故北の湖親方の弟子でロシア出身の大露羅(おおろら)(34)だ。場所前の身体検査で288キロを記録。「超える力士は現れない」とも言われた元大関小錦の285キロを更新し、歴代最重量力士となった。
 新記録に「永遠に名が残る」と笑った大露羅だが、実は、悩みばかりだ。5年ほど前に、弟の結婚式でロシアに帰省した際は、前日から水も食事もとらずに飛行機に乗った。トイレに入れないのだ。機内では2席分に座るが、リクライニングを倒すとひじかけが背中に当たるため、ほぼ直角の状態で座ったまま。日本に戻ると涙目で「僕もう2度と嫌です」と語っていた。
 北の湖親方から誰よりも可愛がられ、秘書役を務め続けた。親方は「こいつが隣にいると、俺が細く見えるでしょ」と笑っていたが、財布や書類を部屋のどこに置き忘れても、大露羅が全部把握していた。
 最高体重を亡き師は何と言うだろう。「『バカ野郎!』って笑いますかね」
 14年ぶりに序二段に転落して迎えた今場所。体重とは裏腹に、相撲にはもう、力強さがない。黒星。引き揚げてきた西の花道には、大露羅にとって忘れられない思い出がある。オヤジと慕う北の湖親方の「最後の土俵」を見つめたのが、ここだった・・・

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負かした力士に手をさしのべなかった北の湖 「屈辱だよ」
216円(税込)

大相撲で「憎らしいほど強い」とまで言われた元横綱北の湖(前理事長・故人)。負けた力士に手を差しのべないことでも知られた。「屈辱だよ。負けて手を借りたい力士なんていない」。その理由を本人は後年、こう話した。大相撲をめぐるさまざまな話を紹介する「角界余話」。今回は北の湖のほか、体重288キロを記録したロシア出身の大露羅(おおろら)、絶品と言われる国技館の枝豆、力士の日焼け対策などいろいろな話題を取り上げる。(2017年9月12日〜9月25日、8600字)

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