文化・芸能
朝日新聞社

運慶さんの謎 800年の時をさかのぼる旅

初出:朝日新聞2017年9月19日〜10月2日
WEB新書発売:2017年11月2日
朝日新聞

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平安末期から鎌倉時代にかけて活躍した仏師、運慶のブームが続いている。2017年秋には、東京・上野の東京国立博物館で、運慶がかかわったとされる仏像など22体が一挙に展示される特別展が開かれ、多くの入場者を集めた。800年の時を超えて今も残る謎、そして謎の解明に取り組む人々の姿を追った。

◇第1章 「あ・うん」どちらを造った?
◇第2章 バカボンのパパに叱られて
◇第3章 書棚からなにげなく…大発見
◇第4章 お水取り、参加したのか
◇第5章 大日如来が、ふたつになった
◇第6章 お香が救った身元証明
◇第7章 X線調査、3度目の挑戦
◇第8章 「門外不出」送り出すわけ
◇第9章 証拠を写すか、CTスキャン
◇第10章 四天王はどこへ行く


第1章 「あ・うん」どちらを造った?

 運慶(うんけい)という名前は、中学生のころから知っていたと思う。鎌倉時代ごろの人で、奈良・東大寺の仁王像を造ったという。歴史の教科書にあった仁王さんの「にらみ」は、東北の田舎に住んでいた少年の記憶にもはっきり残るくらい迫力があった。
 高さ8・4メートルある、その仁王像を初めて間近に見上げたのは、1988年だった。記者3年目。奈良に赴任して間もなく、像の解体修理が始まり、先輩を手伝って時々東大寺に出入りした。
 そのころ、2体の仁王像はこう言われていた。口をへの字に結んだ吽形(うんぎょう)が運慶作で、口を開いている阿形(あぎょう)が兄弟弟子の快慶(かいけい)作だと。
 ところが修理が半ばにさしかかった89年11月、先輩が書いた記事は、こんな見出しがついていた。
 「銘なくても運慶作」(11月1日付大阪本社版朝刊第2社会面)
 えっ? 名前が書いてないのに、作者は決まるの?
 実は、吽形の胎内から「一切如来心秘密全身舎利宝篋印陀羅尼経(いっさいにょらいしんひみつぜんしんしゃりほうきょういんだらにきょう)」というお経が出てきて、運慶の弟とされる定覚(じょうかく)や長男の湛慶(たんけい)ら約200人の名前が書かれていたのに、肝心の運慶はどこにも登場しなかった。それなのに、彫刻史や中世史の研究者たちは「定説は揺るがない」と気にしないのだという・・・

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運慶さんの謎 800年の時をさかのぼる旅
216円(税込)

平安末期から鎌倉時代にかけて活躍した仏師、運慶のブームが続いている。2017年秋には、東京・上野の東京国立博物館で、運慶がかかわったとされる仏像など22体が一挙に展示される特別展が開かれ、多くの入場者を集めた。800年の時を超えて今も残る謎、そして謎の解明に取り組む人々の姿を追った。(2017年9月19日〜10月2日、12800字)

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