社会・メディア
朝日新聞社

世界遺産8つの疑問 沖ノ島登録で注目の実像に迫る

初出:朝日新聞2017年6月28日〜7月12日
WEB新書発売:2017年11月2日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

福岡県の「『神宿る島』宗像(むなかた)・沖ノ島と関連遺産群」の登録で注目された、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産。将来にわたって残したい遺跡などを人類全体の遺産として保護する。そんな制度をめぐる課題や最近の傾向、各国の事情などを、7章に分けて紹介します(2017年6月29日〜7月12日の記事をまとめました)。

◇第1章 外交努力で逆転登録も
◇第2章 登録には、どんな効果や課題があるの?
◇第3章 登録と「落選」、分けるポイントは?
◇第4章 観光客と街の保護、バランスとるには?
◇第5章 登録数、中国がトップに?
◇第6章 「危機遺産」は55件、日本にできることは?
◇第7章 「モノ」より「ストーリー性」が大事なの?


第1章 外交努力で逆転登録も

 「厳しい」「どう戦っていくか、戦略を検討しなければ」。2017年5月6日午前2時ごろ、急きょ開かれた会見で文化庁職員は硬い表情を見せた。その2時間ほど前、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」に対する勧告が伝えられたが登録を認められたのは構成資産の半数だけ。期待していた『満額回答』ではなかった。
 勧告したのはユネスコの諮問機関「国際記念物遺跡会議」(パリ)。イコモスとも呼ばれ、考古学や建築、美術などの専門家でつくるNGOだ。
 世界遺産の審査は2段階ある。各国が国内候補を集めた「暫定リスト」の中から選んだ候補について、まず諮問機関(文化遺産はイコモス、自然遺産は国際自然保護連合)が、「登録」「情報照会」「登録延期」「不登録」の4区分の中から勧告。その後、世界遺産委員会が最終的に決定する。世界遺産委は、世界遺産条約締結国193カ国から選ばれる21カ国がメンバーだ。
 ただ世界遺産委は、諮問機関の勧告をそのまま踏襲するとは限らない。前ユネスコ事務局長の松浦晃一郎さんは「諮問機関の専門的意見は大切だが、委員会が違った価値観を持つことも重要」と語る。
 松浦さんが世界遺産委の議長を務めた1998年、南アフリカは、故ネルソン・マンデラ元大統領が収監された刑務所があるロベン島を推薦した。これに対し、イコモスは「建造物だけみれば『顕著な普遍的価値』とするには無理がある」と否定的な勧告を下した。「顕著な普遍的価値」は英語の頭文字から「OUV」とも略称され、登録に不可欠な概念だ。
 勧告に対し、松浦さんは登録するよう各国に提案し、全会一致で認められたという。「南アが世界遺産条約を締結して初めての申請であり、アパルトヘイトの象徴。認めないわけにはいかなかった」
 日本の推薦でも2007年、「登録延期」を勧告された石見(いわみ)銀山(島根県)が、世界遺産委では逆転登録された。13年には、富士山について構成資産の一部の「三保松原」(静岡県)を外すよう勧告されたが、世界遺産委ではほとんどの委員国が登録に賛同し、一括登録が認められた・・・

購入する

この記事の続きは、WEB新書でお読みいただけます。

世界遺産8つの疑問 沖ノ島登録で注目の実像に迫る
216円(税込)
  • 著者後藤洋平、宮代栄一、中村俊介、河原田慎一、冨名腰隆、乗京真知、渡辺丘
  • 出版社朝日新聞社
  • 出版媒体朝日新聞

福岡県の「『神宿る島』宗像(むなかた)・沖ノ島と関連遺産群」の登録で注目された、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産。将来にわたって残したい遺跡などを人類全体の遺産として保護する。そんな制度をめぐる課題や最近の傾向、各国の事情などを、7章に分けて紹介します(2017年6月29日〜7月12日の記事をまとめました)。(2017年6月28日〜7月12日、8800字)

    スマートフォン、タブレットでも読めます。

    Facebookでのコメント

    このページのトップに戻る