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社会・メディア
朝日新聞社

報告・パラダイス文書〔1〕 影の案内人

初出:2017年11月26日〜12月5日
WEB新書発売:2017年12月21日
朝日新聞

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「我々の専門家と一緒に適切な手順を踏めば、税を払う必要がなくなります」――。2013年1月、こんな提案書が添付されたメールが、富裕層向けの資産管理会社に届いた。メールを送ったのは、法律事務所「アップルビー」。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が世界のメディアと連携して取材を進めた「パラダイス文書」の主な流出先だ。世界中の富裕層が、税の支払いをいかに逃れているかを暴露したパラダイス文書。流出した電子ファイルは、約1340万件に上る。水面下に潜むタックスヘイブンの実態に迫るシリーズ第一部は、税逃れを指南するプロの「影の案内人」の実態に迫ります。

◇第1章 F1王者へ、税逃れの提案書
◇第2章 島に2時間、戻った4.6億円
◇第3章 重要顧客、売上総額54億円
◇第4章 疑惑の主、トランプ氏の恩人
◇第5章 アップルの「本音」暴く
◇第6章 税逃れ、GDPを押し上げた
◇第7章 コンプラ違反の境界で
◇第8章 「ギフト」、役人に特別配慮
◇第9章 「秘匿性」に群がる顧客
◇第10章 資源ない島の生き残り戦略
◇第11章 格差広がる島「恩恵ない」


第1章 F1王者へ、税逃れの提案書

 「優れたコネクションを持つことが重要です」
 強気の売り文句で始まる提案書が添付されたメールが、富裕層向けの資産管理会社に届いた。2013年1月のことだ。
 「御社の顧客がチャレンジャー605を購入したと聞きました」
 高級ジェット機を2680万ドル(当時20億円)で購入したばかりのF1世界王者、ルイス・ハミルトン選手に向けた提案書だ。全カラーの8ページ。表紙には、ジェット機の外観写真があしらわれている。「タックスヘイブン(租税回避地)に拠点」「知識豊富な法律専門家」。自らの強みを誇る言葉が並ぶ。
 世界に展開する12の拠点も列挙されている。
 英領バミューダ諸島、ケイマン諸島、マン島……。多くが、タックスヘイブンとして知られる場所だ。
 表紙の真ん中にはキャッチコピーが記されていた。
 「適材適所 優れたコネクション」
 提案は、露骨だった。
 「我々の専門家と一緒に適切な手順を踏めば、税を払う必要がなくなります」
 提案に従ったF1王者は、付加価値税(消費税)330万ポンド(4・6億円)全額を還付で取り戻した。
 メールを送ったのは法律事務所「アップルビー」。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が世界のメディアと連携して取材を進めた「パラダイス文書」の主な流出元だ。
 世界中の富裕層が、税の支払いをいかに逃れているかを暴露したパラダイス文書。流出した電子ファイルは約1340万件に上る。ハミルトン選手への提案書はその一片にすぎない・・・

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