【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

文化・芸能
朝日新聞社

天声人語「四字熟語」コレクション 1990〜2017年

初出:1990年12月27日〜2017年12月16日
WEB新書発売:2018年1月11日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

 「創作四字熟語」は、その年の世相を示す新作熟語を一般から募り、優秀な作品を毎年発表している住友生命のイベントです。「天声人語」では、1990年の第一回からほぼ毎回、この四字熟語を題材にとりあげています。1990年から2017年の最新版までをWEB新書にまとめました。世紀をまたいだこの20数年の日本の変化を一望にできる一冊です(1996年のみ欠番)。

◇第1章 90年世相四字熟語(1990年)
◇第2章 創作四字熟語(1991年)
◇第3章 今年の世相を反映した『創作四字熟語』(1992年)
◇第4章 創作四字熟語(1993年)
◇第5章 世相反映した「創作四字熟語」(1994年)
◇第6章 創作四字熟語で今年の世相をたどる(1995年)
◇第7章 書きとめたことばをいくつか(1997年)
◇第8章 今年の世相風俗を四字熟語で表現(1998年)
◇第9章 「創作四字熟語」で99年を振り返る(1999年)
◇第10章 「創作四字熟語」で2000年の世相を振り返る(2000年)
◇第11章 創作四字熟語で1年を振り返る(2001年)
◇第12章 「創作四字熟語」で1年を振り返る(2002年)
◇第13章 「創作四字熟語」でこの1年振り返る(2003年)
◇第14章 『創作四字熟語』で回顧(2004年)
◇第15章 創作四字熟語(2005年)
◇第16章 創作四字熟語で1年を振り返る(2006年)
◇第17章 創作四字熟語(2007年)
◇第18章 「創作四字熟語」でこの年を振り返る(2008年)
◇第19章 今年の創作四字熟語(2009年)
◇第20章 四字で言い切る世相(2010年)
◇第21章 今年の創作四文字熟語(2011年)
◇第22章 「税途多難」の一年(2012年)
◇第23章 「危雨増大」だった1年(2013年)
◇第24章 今年の創作四字熟語(2014年)
◇第25章 今年を映す四字熟語(2015年)
◇第26章 暴語米断の年の瀬に(2016年)
◇第27章 創作四字熟語で振り返る(2017年)


第1章 90年世相四字熟語(1990年)

 1990年の世相を4字の熟語に表現すると、どうなるか。住友生命が募集した「創作四字熟語」に2400余りの作品が集まった。さっそく「四時塾児」などというのがある。たしかに、子供たちには遊ぶひまもない。「飼育偏重」の教育だ▼校門での圧死事件を思い出させる「心緊校則」症の恐ろしさ。子供が少なくなり、高齢化が進んでいる。「少子多老(しょうじたろう)」の世の中である。どちらを向いても「右翁左媼(うおうさおう)」。男と女のあり方も、確実に変わってきた。「婦唱夫随」と書いた人が6人もいた。「取捨洗濯」が2人▼夫や父親の洗濯物を別扱いにする、という話を近ごろ聞く。箸(はし)でつまむ、ともいう。本当だろうか。何といっても、腹が立つのは土地の高騰と住みにくさ。7人もの人が「一画千金」と書いた。「七転八騰」には土地ころがしでもうける人への恨みがこもる。通勤は「辛抱遠路」。泣く泣く「単身不妊」だ。この熟語の作者は5人▼そうして「昼夜健康」で働き続ける24時間である。どだい無理な話だ。過労死の痛ましさに、勤続疲労などという言葉も生まれた年だった。きたない、きつい、きけん、の3Kを嫌い、人が集まらなかった年でもある。「人無景気」は多くの外国人労働者によって支えられた。海外の動きについての作品も多い▼湾岸危機への日本の対応ぶりを評して「中東半端」。7人の人から異口同音の投稿である。国会では「海外破憲」論議があった。「異旗統合」は、もちろん、東西に分かれていた2つのドイツの意気投合ぶりの表現。「一挙一独」には速度が感じられる。同じドイツでは「異風同道」もある▼応募者は小学生から70代まで、と幅が広い。年配の人に比べると、若い人の応募が少なかったそうだ。それにしても、人々の健全な感覚のみごとさに驚く。苦しい世相をも、笑いのめし、しゃれのめす。政界や芸能界の「二世風靡(ふうび)」現象にも目を向け、「山死水迷」の行方を心配している・・・

このページのトップに戻る